専門分野で優れた捜査技能を全国の警察官に伝える警察庁指定広域技能指導官に、兵庫県警鑑識課の横野雅彦警部補(55)が選ばれた。警察犬係として、「相棒」と共に事件や行方不明者の捜索など多数の現場に出動し、解決に導いてきた。横野警部補は「『人犬一体』の思いで取り組んできた。私自身、もっと勉強し、全国の警察官に還元していきたい」と意気込む。
1989年に採用され、通算19年にわたり警察犬業務に携わってきた。出動した現場の数は約2900に及ぶ。警察官だった父の姿を見て育ち、身近だった職業を選んだが「犬や猫、インコなどの動物が好きで、幼い頃の夢は動物園の飼育員だった」と振り返る。
現在は10代目の相棒「エルフオブハウスベッケン号」(6歳、雄)とペアを組む。生後5カ月から一緒に過ごし、「甘やかし過ぎたのか、人懐こい性格。なでてやってください」と優しく笑う。
警察犬には厳しい訓練が必要というイメージがあるが、横野警部補は「犬は子どものようなもの。調子がいい日があれば、悪い日もある。見極めてあげることが大切」と語る。長時間の訓練はせず、集中力が持続するよう1回5~10分を繰り返す。昼休みには訓練所の広場で一緒に昼寝することもあるという。
取材中も、エルフ号は横野警部補の足元にぴったりと付き、なでるようにせがむ甘えっぷり。一方で、現場では数々の活躍を重ね、これまでに8回の表彰を受けた実績がある。昨年7月には西宮市内で高齢男性が行方不明になった際、枕カバーのにおいを頼りに周辺を捜索。わずか5分で、マンションの植え込みに倒れていた男性を発見した。
横野警部補は「人の目では見つけられない場所も、においや気配で気付いてくれる。犬が何かを察知したことを感じ取れるかが、私たちの仕事で大切なこと」と話した。
今年4月、全国で新たに33人が広域技能指導官に指定され、計213人になった。警察犬業務の指導官は2人で、もう1人は神奈川県警所属の警察官。兵庫には、交通捜査課や鑑識課などに横野警部補を含む計12人が在籍している。(谷川直生)
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