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周辺で田植えが進む中、矢野義昭さんが管理する苗代(手前)で田植えを待つ山田錦の苗=4日、三木市吉川町古市(撮影・辰巳直之)
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周辺で田植えが進む中、矢野義昭さんが管理する苗代(手前)で田植えを待つ山田錦の苗=4日、三木市吉川町古市(撮影・辰巳直之)

 地球温暖化による気候変動は農業にも既に影響を及ぼしている。気温上昇が米や野菜、果樹の品質低下や収穫減につながっており、栽培の適地がじわりと北上している。農家はこの変化にどう立ち向かっているのか。酒米王者「山田錦」の産地、三木市の田園地帯に向かった。

 6月4日、三木市吉川町古市の田んぼには、植えられたばかりの山田錦の苗が整然と並んだ。そんな中、まだ水も張られていない一画があった。

 約1・8ヘクタールで育てる矢野義昭さん(70)は「今年の気温データなどを見ると、刈り取りは10月20日ごろになる。植え付けは、周囲より10日遅い14日ごろが良いだろう」と大切に育てる苗代に目をやった。

 山田錦も温暖化の影響を受けている。これまでよりも穂が出たり、成熟したりする時期が早くなってしまい、強い日差しによって品質が低下、収穫量も減る年が頻発するようになった。

 出穂(しゅっすい)後の高温を回避するため、兵庫県立農林水産技術総合センター(加西市)は10年ほど前から田植えを遅らせる方法を生産者に伝えている。最適な時期を示すシステムも開発した。

 利用したことがある矢野さんは「山田錦が北播で生まれて85年を超えた。伝統を伝説にしないよう、この地で守っていく」。

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 「温暖化のおかげで北海道の米がうまくなった」。昨年秋の衆院選で北海道小樽市を訪れた自民党麻生太郎副総裁の演説中の発言が波紋を呼んだ。

 発言の是非はともかく、農作物の栽培適地は徐々に北に向かうなどする。リンゴは東北地方や長野県から北海道に、ミカンは沿岸部から内陸部に適地が移動するという予測がある。

 これを逆手にアボカドといった亜熱帯果樹の栽培など、温暖化を活用するケースもある。稲刈りの後に残った株から伸びた稲を再び刈り取る「再生二期作」も注目される。

 今後、主食用米の収穫量は増加傾向が続くとされるが、2040年代には高温により白く濁る「乳白米」の割合が増え、経済損失が拡大するとの報告もある。

 県立農林水産技術総合センターは暑さに強い主食用米の新品種開発を急ぐ。農産園芸部の杉本琢真課長は「環境の変化に100年耐える品種はなかなかない。生産者の要望に応え、消費者においしいと言われる米を提供する」と話す。

 気候変動に対応しようという動きの一方で、温暖化の要因である温室効果ガス排出抑制を、農業の現場でも進めようという取り組みも始まっている。加西市の農事組合法人を訪ねた。(堀内達成)

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