歌手の堀内孝雄(72)がデビュー50周年を迎えた。伝説のフォークグループ「アリス」で一世を風靡(ふうび)し、ソロでもニューミュージックから演歌・歌謡曲まで数々のヒットソングを世に送り出してきた。そんな日本音楽界の大御所が、下積みの青春時代を過ごしたのが神戸だ。「僕らの原点。神戸抜きには語れない」と特別な思いを寄せる。
大阪市出身。アリスのリーダーでシンガー・ソングライターの谷村新司とは、1960年代に関西の学生フォークを先導していた神戸の音楽サークル「ポートジュビリー」で出会った。参加するため、バンドでオーディションを受験。審査員の一人が谷村だった。
「あと3、4人の審査員がいて、みんなバツ。でも、チンペイさん(谷村)だけマルを付けてくれた。後々聞いたら説得してくれたみたい。何かの縁ですね」
72年3月、アリスとしてデビュー。その後にドラマーの矢沢透が合流した。しかし、しばらくは鳴かず飛ばず。ツアーやライブに明け暮れた。「西脇や加古川にも行きましたよ。ダイエーの前の焼き鳥かウナギを焼いている隣でサイン会もした」と懐かしむ。
地道な活動の成果もあり、別のフォークグループのカバー曲「今はもうだれも」がヒット。その後、オリジナル曲の「冬の稲妻」の大ヒットなどで一時代を築く。アリスの活動停止後はソロでも活躍。「君のひとみは10000ボルト」「恋唄綴(つづ)り」などの名曲を生み、希代のヒットメーカーとして地位を確立した。
半世紀を振り返り、「長く続けることはまんざらでもない。あきらめないのが大事。こつこつ築いたことは簡単には崩れない」と力を込める。これからも気負わず、走り続ける。「『堀内、ようやりよったわ。そんなにできるんやったら、俺もやってみよう』。そう、やる気になってもらえたら」
50周年を記念し、2枚組のベストアルバム「愛(いと)しき日々」を発売した。1枚目は書き下ろし4曲と、堀内がこだわり抜いたややマニアックな曲を選んだ。「なじみは薄いかもしれないが、僕の本質を知る上では絶対にお薦め」。2枚目はおなじみのヒット曲やスタンダード曲を集めた。(藤森恵一郎)