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「海が好きだから、自然保護に力を入れる政治家も応援したい」と話す専門学校生=神戸市中央区
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「海が好きだから、自然保護に力を入れる政治家も応援したい」と話す専門学校生=神戸市中央区
「勉強が好きなんて、3、4年前の僕では考えられない」と話す定時制高校の生徒=神戸市長田区
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「勉強が好きなんて、3、4年前の僕では考えられない」と話す定時制高校の生徒=神戸市長田区

 18歳。誕生日を迎えて新たに選挙権を得る。そう聞くと、まず現役の高校3年生が思い浮かぶ。でも、それとは違った学びの道を歩む若者たちも少なからずいる。政治や社会のことはまだよく分からないけれど、将来への漠然とした不安を拭ってほしい。挑戦する背中を押してほしい。だから、選挙に行きます。取材で出会った2人が話してくれた。(堀内達成)

 「学校に通いたくても通えなかった人が、不利な状況に追い込まれる世の中はおかしいと思う」。神戸市北区の専門学校生(18)は淡々と、時に熱っぽく話す。

 小学生の時、仲の良かった友だちの引っ越しを機に友人関係がこじれた。「中学になったら変わる」と信じていたが、状況は変わらず不登校になった。

 心配した親から「神戸フリースクール」(神戸市中央区)の存在を教えてもらい、そこで出会った友人らに救われた。「『フツー』じゃない学校生活の方が楽しい」。そう思えた。

 今春、フリースクールが連携する通信制高校を卒業し、専門学校に進学した。演技や漫画、動画制作を学んでいる。今は楽しいが、将来のことを考えると「学校にちゃんと通えなかった自分は働けるのか」と不安になる。焼き肉店でバイトに挑戦したが、少し自信をなくした。

 人は誰でもつまずく。それでもいろんなことに挑戦できる社会がいい。フリースクールのように不登校の子が教育を受けられる受け皿をもっとつくり、社会に知られるといい。そんな思いを込めて、参院選では1票を投じるという。

     ◇

 定時制の湊川高校(神戸市長田区)に通う男子生徒(18)は、すでに期日前投票を済ませた。「ヤングケアラーの支援とか、若者向けの政策の内容で選びました」。今年19歳になるが、2年遅れて入学したので2年生だ。

 祖父母を支えるため、中学生の時から兵庫県外で3人暮らし。高校は好きだったが、1年の時、校内のトラブルでやめることになった。母のいる神戸に戻り、約2年後、高校に入り直す。定時制を選んだのは「年上でも受け入れられるかな」と思ったから。「ファッションとかパソコンとか、何かに突出している子が多い。補い合うって感じで僕に合っている。もっと良さを知られてほしい」

 今は学校とスーパーのバイト、塾通いの毎日だ。友人に勉強を教えて、喜んでもらえるのがうれしい。「大学に進学して、学校の先生みたいに人に何かを教えられる仕事に就きたい」。夢は膨らむ。

 2年遅れの焦りもある。でも、いずれ取り戻せると思っている。「定時制出身や2年遅れが不利になるような社会は嫌だ。偏見を持たず、一人一人を見てほしい」。そう願う。

■不登校過去最多19万人超 定時制、多様な生徒受け入れ

 小中学生の不登校は増加傾向にある。文部科学省は年間30日以上欠席した児童や生徒を不登校と扱っており、2020年度は過去最多の約19万6千人に上った。

 NPO法人「全国不登校新聞社」(東京)の石井志昂(しこう)代表理事によると、民間が運営するフリースクールは1990年代に全国に広がったものの、不登校の子のわずか4%程度しか利用できていないという。

 利用者が伸びない理由はまず、スクール数が足りないこと。増えてはいるものの、全国でもまだ500カ所超とされる。また平均3万3千円という月会費のハードルもある。補助金など公的支援がほとんどないことが大きいという。

 一方、定時制高校は働きながら学ぶ生徒が減っていることなどから、全国的に減少傾向がみられる。兵庫県も現在23校だが、20年前から6校少なくなった。

 ただ、近年は働く生徒だけでなく、不登校経験者や特別な支援が必要な生徒、外国籍の子など多様な生徒の受け皿にもなっている。20年度は通信制を含む全高校生約330万人のうち、2・4%の約8万人が定時制の生徒だった。

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