• 印刷
参院選公示の前日、明るく公正な選挙を願って掲げられた白バラ旗=6月21日、兵庫県庁
拡大
参院選公示の前日、明るく公正な選挙を願って掲げられた白バラ旗=6月21日、兵庫県庁

 参院選の期間中、動画投稿サイト「ユーチューブ」に、政党や候補者が登場する有料広告が数多く掲載されていました。インターネット選挙が解禁され、有権者へのアプローチの幅が広がりましたが、公職選挙法では選挙活動のための有料のインターネット広告は禁止されています。これらのアピールは、法的にOKなのでしょうか。

 「身を切る改革」「決断と実行」「ヤングケアラー支援」「暮らしを守る」-。

 10日に投開票された参院選の選挙期間中、党の幹部や候補者が「訴え」をアピールするさまざまな広告がユーチューブに流れていました。政治や選挙と無関係の動画にも、次々と挿入され表示されました。

 運営するグーグルのサイトなどによると、党や候補者などがユーチューブのアカウントを開設し、動画を投稿するのは無料でできます。一方、他の動画に挿入される広告は有料で、画面に表示されたり、ユーザーがクリックしたりするたびに費用が発生する仕組みといいます。

■公選法では有料広告を禁止

 インターネットを活用した選挙活動は、2013年4月に成立した改正公選法で解禁されました。候補者は、交流サイト(SNS)などを使って有権者にアピールできるようになりましたが、公選法142条の6には「インターネットを利用した有料広告の禁止」が定められています。

 条文は、選挙活動のための候補者の氏名や政党、政治団体の名称、それらを類推させるような広告が該当すると規定します。総務省によると、ネット選挙の解禁は、お金のかからない選挙を実現する施策で、有料広告を認めると、各党の掲出が過熱して費用がかさみ、趣旨に逆行する恐れがあるといいます。

■選挙活動ではなく「政治活動」

 それではなぜ、各党や候補者のネット広告が流れているのでしょうか。

 総務省の担当者は「政治活動の有料広告は認められている」と解説します。選挙期間中だとしても、いわゆる選挙活動ではなく、政治活動であれば、法的には問題がない-ということらしいのです。

 ただ、建前は政治活動であっても、候補者が出演したり、党の政策をアピールしたりする広告が多く、「グレー」との印象を抱きます。両者の線引きについて、この担当者は「総務省が良い、悪いを決める立場になく、問題があるかどうかを認定するのは捜査機関の判断による」とします。

■表示ターゲットを細かく設定

 今回の参院選では、兵庫選挙区でも候補者自身が出演するユーチューブ広告を出した陣営が複数ありました。そのうちの一つの陣営は「候補者ではなく、政党支部長の肩書で出演した。内容も政治活動の政策宣言で、選挙活動には当たらない」と説明します。

 利点は、ユーチューブ側のユーザー情報を活用し、広告の表示対象を「兵庫県内に住む18歳以上」などとターゲットを細かく設定できるところ。この陣営が出した広告も、数十万回再生されたといい、一定の手応えがあったといいます。

■他の陣営の広告が…

 一方で、ネット選挙ならではのこんな「失敗」も。「うちの候補者が開設したユーチューブアカウントの動画を見ていたら、他の陣営の広告が表示されて『あちゃー』となった」と苦笑しました。

 兵庫県内のある地方議員は、ユーチューブ広告と選挙の関係をこう指摘します。「公選法でどこまで許されるのか、基準があいまいな印象だ。ただ、ネットが生活に浸透し、幅広い世代がユーチューブを視聴するようになっている以上、陣営としては『グレー』だと分かっていても活用しない手はない」

(参院選取材班)

参院選兵庫22特集
もっと見る
 

天気(9月6日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 0%

  • 35℃
  • ---℃
  • 0%

  • 35℃
  • ---℃
  • 0%

  • 37℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ