成人年齢が18歳に引き下げられた今年4月1日、改正少年法も施行された。新たに18、19歳の特定少年は成人のような刑事手続きを受ける罪種を広げて厳罰化されたが、全ての少年事件が家庭裁判所に送られる仕組みは維持された。家裁で少年少女の成育歴や性格、家庭環境などを調べるのが「調査官」だ。扱う事案の大多数は、窃盗や傷害、道交法違反といった卑近な非行。彼らの仕事に焦点を当て、少年法が目指す「立ち直り」を考える。(那谷享平)
家庭裁判所の面接室。「何でそこまでする必要があったの?」。30代の女性調査官のヤマザキが尋ねると、ソウタ(18)は弱々しく答えた。「僕もそう思います」。彼はけんかで相手にけがをさせて逮捕され、家裁にやって来た。過去に非行歴があった。
初回の面接は1時間半に及んだ。反省し、落ち込んだ様子だったソウタは、「もう少年院ですよね」とうつむいた。何かを諦めたような、どこか投げやりな態度が気にかかった。
ヤマザキは、警察が送ってきた捜査資料を再び読み返した。両親との関係、友人との付き合い…。ソウタの職歴もあった。学校に通いながら、早朝のアルバイトを何年も続けていた。両親によると、職場の大人に信頼され、現場を任されていた。
「仕事を真面目に頑張っている。なかなかできることじゃない」。3回目の面接でかけた言葉に、ソウタは泣き崩れた。ヤマザキは「自分を見てくれる大人はいないと感じていたのかもしれない」と思った。
家族から腫れ物のように扱われ、ソウタは焦りやむなしさ、孤独感を隠して生きていた。「似たような事件でも、どこかに『その子らしさ』がある。調査官はそれを探す仕事だ」。悪い面があれば、必ず良い面もある。ヤマザキはそれを必ず本人に伝えている。
■
家裁調査官は、長ければ数カ月かけて非行の背景を調べる。その報告を基に、裁判官が審判で少年の処遇を決める。
昭和の頃の不良や暴走族は姿を消し、少年非行は、平成から令和まで一貫して減少傾向にある。それでも2020年、全国の家裁が受けた非行少年の数は5万1485人に上る。
あるベテラン調査官は「非行に走る子どもは何かしら生きづらさを抱えている。それに敏感でありたい」と語る。大麻に手を出した少年は「僕には何もなかった」と家庭での虚無感を吐露した。恐喝容疑で逮捕された少年は過去に虐待を受け、「どうせ大人なんて」と吐き捨てるように言った。彼らの姿に社会のゆがみも見る。
こうした言葉を頭ごなしに否定しない。「何が起き、どう感じていたのか」。時に共感し、一緒に事件や生い立ちを振り返る。反省し、生活態度を改める「更生」は、周囲の支えだけでなく、少年の自己理解の先にあるからだ。=文中仮名=
【家庭裁判所調査官】少年事件で、当事者の少年を調査する国家公務員。裁判官が少年審判で適切な少年の処遇を決定できるように、心理学や教育学などの知識も生かして非行の背景を調べる。捜査機関の捜査とは異なり、調査は本人や保護者の面接や関係先への情報収集などで、審判も少年の保護と更生を目的とする。離婚や親権争いなど家事事件の調査も担当する。
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