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投票で演目を選んだ狂言祭に出演する茂山あきら(右)、千之丞の父子=大阪市北区
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投票で演目を選んだ狂言祭に出演する茂山あきら(右)、千之丞の父子=大阪市北区
過去に上演された「蟹山伏」(当日と配役が異なる。セクターエイティエイト提供)
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過去に上演された「蟹山伏」(当日と配役が異なる。セクターエイティエイト提供)

 ファン投票によって公演内容を決める企画「納涼 茂山狂言祭」が8月21日、大阪市中央区の大槻能楽堂である。兵庫でも定期公演を行う狂言界の名門・茂山千五郎家一門が出演。夏の怪談シーズンらしく、故・二世千之丞(せんのじょう)の当たり役で、漫画やアニメで有名な怖くない妖怪「豆腐小僧(こぞう)」を長男あきらが初めて演じる。(金井恒幸)

 茂山千五郎家は兵庫県立芸術文化センター(西宮市)で春に古典、夏に新作中心の公演を披露するなど、兵庫とゆかりが深い。リクエスト形式は2003年から始め、ファンが公演に参加でき、演者も上演の少ない役を経験できる。

 新作狂言「豆腐小僧」(2002年初演)は、怪談を得意とする作家・京極夏彦さんの作。京極さんには豆腐小僧を題材にした小説もあり、アニメ映画化もされている。兵庫ゆかりの漫画家で、京極さんと妖怪研究の仲間だった水木しげるさんも、「ゲゲゲの鬼太郎」の中で豆腐小僧を登場させている。

 豆腐小僧は、豆腐を持つ子供のような姿をしている。江戸時代に流行し、歌舞伎の題材にもなった人気者だ。

 他の妖怪と違い、人から怖がられたことがない豆腐小僧。狂言では、大名の使用人に当たる「太郎冠者(たろうかじゃ)」から、「人間なのに大名は恐れられている」と聞く。「自分も人を怖がらせたい」と考える豆腐小僧は、大名を脅かそうとするのだが…。太郎冠者役にあきらの長男・三世千之丞、大名役は千五郎。

 「父はかわいらしいお化けを演じていた。今でもその面影を思い出す」と振り返るあきら。「京極さんの作品は古い言葉を使うなど古典狂言に近い面があり、せりふも面白い」としながら、「怖がらせたいのにできない、お化けのジレンマみたいなものも表現したい」と意欲を見せる。

 夏らしさといえば、沢辺でカニの精が登場する「蟹(かに)山伏」もある。

 山伏が修行を終えて従者と帰郷する途中、カニの精が突然、飛び出してくる。従者は金剛づえで打ちかかるが、逆に耳をはさまれる。山伏が祈りの力でやめさせようとするが、かえって状況は悪化し、山伏まで被害に遭う。

 「カニの精は、山伏が偉そうだから『邪魔してやれ』という楽しみのための愉快犯」と山伏役の千之丞はみる。「耳がはさまれ、引っ張られる場面を中腰のままやるのは大変だが、体を張って汗をかき、痛がっているのを笑ってもらいたい」と呼び掛ける。

 ほかの演目は、口うるさいが愛情豊かな「わわしい妻」と夫の離縁騒ぎが題材の「延命袋」▽鼻を手で打つ奇抜な技が登場する「鼻取(はなとり)相撲」▽せきをすると暴れる馬を使って太郎冠者が主に仕返しをする「止動方角(しどうほうがく)」▽長い棒の先のかみそりで老僧の頭をそろうとする姿が楽しい「重喜」。

 1部(午後0時半開演)、2部(同4時開演)で演目が異なり、各部前売り6千円(当日6500円)。セクターエイティエイトTEL06・6353・8988

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