全日制の兵庫県立高校のうち、2025年度に6校に再編される14校の校名が明らかになった14日、各地に波紋が広がった。激しい少子化の現状に「やむを得ない」との声がある一方、卒業生は「母校がなくなるのはさみしい」と落胆。地域住民は「まちの元気がなくなる」と懸念を示した。
■中播磨は5→2校に
姫路市など中播磨地域では県内最大規模の再編が予定され、今回は全日制県立14校のうち、5校を2校に統合する方針が示された。姫路市立3校を1校に統合する案も検討されており、進路選択について戸惑いが広がる。
中西播磨地域で展開する学習塾「ジェイ教育セミナー」の福永洋さん(69)は地元の公立校が減ることで、私立や西播磨地域を志望する生徒が増えるとみる。「対象校を避ける動きが出る可能性がある。これまでのノウハウが生かせず、中学の進路指導は混乱するだろう」と話す。
離島にある全校生徒63人の家島高は姫路南高、網干高との統合対象となった。生徒の大半が通学に姫路港と家島をつなぐ定期船を利用。家島観光事業組合の岡部賀胤(よしたね)代表理事(62)は「もし家島に高校がなくなったら、なんとか維持している定期船の便数が減らないだろうか」と不安がる。
夢前高と統合する方針が示された福崎高では、地域から期待の声が上がる。生徒数減に歯止めがかからなかったが、福崎町商工会の木村真一事務局長は「統合で福崎の校舎が残れば、生徒数が増え、町のにぎわいにもつながる」と語った。
(井上 駿、大山伸一郎、吉本晃司)
■北播磨 旧町唯一の吉川高対象
北播磨地域の三木市では三木北高、三木東高、吉川高の3校が1校になる。統合対象とならなかった三木高を含め、市内4校が再編で2校に半減することになり、地元の衝撃は大きい。
吉川高は旧吉川町唯一の高校で、町の文化祭などを通じて地域との関わりも深い。吉川町まちづくり協議会の山本貴美江会長(72)は「若い人たちの声を聞けなくなる。まちの元気がなくなってしまう」と存続を望んだ。
隣接する三田市などの高校は10~20キロ離れ、高校進学率が低かった旧町民にとって、高校開校は悲願だったという。前身は1948年創立の有馬高校分校。地元の強い要望もあり、74年に分校から独立する形で開校した。吉川町商工会の三村広昭会長(61)は「吉川高がなくなれば、子どもたちが遠くに通学することになる。他の学校とは状況が違う」と訴えた。
(長沢伸一)
■神戸・阪神6→3校に
阪神地域では西宮北高と西宮甲山高の統合が示された。西宮甲山高の1期生の男性(54)は「とても残念でさみしい」と落胆する。学校の規模が小さく、近年は定員割れが続いているため、卒業生の間でも「統廃合の対象になるのでは」との心配は絶えなかったといい、「少子化の流れにはあらがえないが、在校生や地域には少なからず動揺があると思う。丁寧に説明してほしい」と求めた。
神戸市では、北区の神戸北高と神戸甲北高、西区の伊川谷高、伊川谷北高が統合することに。「統合後の高校の場所や学力レベルがどうなるのか。親として気になる」と話すのは、北区の女性(45)。長女は中学1年で、2025年春に高校受験を予定する。一方で「今は学区も広く、選択肢が多い。娘のやりたいことを見極めたい」と冷静に受け止めた。
(山岸洋介、貝原加奈)
【県立高校教育改革第3次実施計画】兵庫県内125の全日制県立高校のうち、28校を統合して13校に再編する。背景には約30年前より生徒数が半減した一方、学校数はほぼ同じで、小規模校が増加していることがある。2025年度は16校を7校に再編する予定だったが、うち2校は検討を継続することになった。28年度は12校を6校に再編予定で、対象校はその3年前に公表される。
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