神戸・三宮のゲイバー「レインボウビースト」を営むBEA(ビー)さん(55)はショーの制作、出演を一人でこなす。かつて大阪の有名店で活躍し、海外に渡った経験もあるゲイダンサーだ。
本名は、池田周介さん。和食店の次男として福岡市・博多で生まれた。小学生からオルガン教室に通い、発表会でスポットライトを浴びるのが好きだった。
10代の頃、東京で電子オルガンのプロプレーヤーとして活動したり、実家で板前の見習いをしたりしたこともあった。でも、どれもしっくりとこず、長続きしなかった。
夜の世界に飛び込んだのは20歳の時だ。両親に何も言わず、家を出た。恋人の家で暮らしながら、中洲のショーパブで働き始めた。
生まれ育った町は想像以上に窮屈だった。
店には知り合いが来た。飲食業界で名の知れた父の存在がいつもちらついた。この閉塞(へいそく)感を打開したい。知人のつてを頼って大阪へ出ようと決めた。
博多を出る前、両親に「この世界で、自分の力で生きていく」と伝えた。「食べていけるのなら好きにしなさい」と送り出してくれた。
◆
大阪では、ミナミの有名なショーパブで唯一の男役として鳴らした。
27歳で転機が訪れた。フランスと日本のゲイダンサーによる合同公演が、大阪の梅田芸術劇場と東京の博品館劇場で開かれると聞いた。
オーディションを通過して舞台に立った。そのパフォーマンスが見初められ、フランスのパブから声がかかった。「あの頃は向上心のかたまりだった。常に上へ、上へ」
1年間、リールという町のパブで踊ったが、拍子抜けもした。「クオリティーも待遇も日本の方が上だった」。翌年には英ロンドンへ。語学学校に通いながらダンスレッスンに励んだ。
ロンドンではステージに上がる機会はほとんどなかった。学生は安く舞台を見ることができたため、暇を見つけては劇場へ。スポットライトのまぶしさ、舞台から見る景色に焦がれた。
2年の海外生活を経て帰国すると、周囲のまなざしは変わっていた。
「海外でやってきたというだけで、もてはやされました。でも、自分では実力はさほど変わっていないと分かっていた。うぬぼれちゃいけないって思った」
30代前半で大阪に初めて自分の店を持った。表現者として、何ができるのか。これまで有名店や海外でダンサーとして積み重ねてきた経験は、店の経営とは全く別物だった。
「やることなすこと、全てがうまくいかなかった」
そのショーパブに客は入らず、借金は増えた。1年足らずで店はつぶれた。
信用、財産、自信。どれをも失った。唯一の武器だったダンスまでも。人生はどん底まで落ちた。(大田将之)
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