兵庫県内を管轄とする神戸地裁管内で、民事調停を1年間に受け付ける件数が過去10年で半減したことが分かった。全国的にも同様の傾向で、多重債務問題の解決を目指した法改正や任意整理を扱う弁護士の増加により、多重債務者の調停利用が大幅に減ったことが要因とみられる。調停制度ができてから10月で100年。同地裁は、節目を迎える制度について「簡易に問題解決ができる」とアピールに力を入れる。
調停制度は金銭トラブルや借地借家、公害などの問題を取り扱う民事調停と、家庭に関する問題が対象の家事調停に分かれる。うち民事調停は新規受付件数が減少傾向にあり、神戸地裁管内(地裁、簡裁)では、2012年の3144件から21年には1400件(速報値)と半数以下に。全国でも約5万6千件から約3万2千件に減った。
同地裁によると最大の要因は、民事調停の中でも借金返済などが困難な人が調停委員会の仲介を受け、債権者と返済の調整を図る「特定調停」の減少という。
特定調停は2000年に始まり、当時は長引く不景気や高い貸付金利の問題などから申し立てが急増。03年には全国の簡裁で受け付けた民事調停の9割近くを占めた。
だが、21年は簡裁の受け付け分2万5476件(速報値)のうち、特定調停は約1割にとどまった。大幅な減少について、債務問題に詳しい辰巳裕規弁護士(兵庫県弁護士会)は、高金利貸し付けの温床となっていたグレーゾーン金利廃止などの法改正もあり「制度を利用していた多重債務者自体が大きく減っている」と説明する。
さらに「2000年代に比べ、債務整理を扱う弁護士が増えたことも影響している」と指摘。弁護士に任意整理を依頼すれば、弁護士と債権者との話し合いで解決が図られるため、債務者自身が申し立てる特定調停を利用するメリットは少なくなったという。
一方で、災害被災者が生活再建を目指し、被災前から抱える住宅ローンなどの整理をする際には、ガイドラインとして最終的に特定調停を申し立てることが組み入れられている。裁判所による「お墨付き」という役割はなお重要とされる。
神戸地裁の西川知一郎所長は「調停制度そのものは優れている」とし、「手続きに関する案内にも力を入れ、制度を多くの人に知ってもらえるよう努めたい」と話す。(篠原拓真)
【インタビュー】神戸地裁所長「当事者の意向、的確にくみ取る」
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