兵庫県内のこども家庭センター(児童相談所)で2021年度、児童虐待事案の相談の受け付けが過去最多となる9412件に上ったことが分かった。暴言などの「心理的虐待」を中心に10年前比で4・1倍に増えており、県は「虐待が疑われる状況を積極的に通報する意識が浸透してきた」とみている。
県が設置している7カ所(中央、尼崎、西宮、川西、加東、姫路、豊岡)と、神戸、明石市の児相に寄せられた件数を集計した。1990年度から統計を取っている。
11年度の相談件数は2272件だったが、増加傾向が続いて20年度は8816件に上り、さらに1年で6・8%伸びた。
11~21年度の地域別の増加率は、県所管分の3・5倍に対し、神戸市分は4・8倍に達した。明石市の児相は19年度に新設されたことから、10年前との比較データはない。
21年度の県所管分の相談内容は、心理的虐待が62・7%を占め、11年度に比べて30・3ポイント増加した。内訳は、子どもの前で配偶者らに暴力を振るってストレスを与える「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」が半数以上に及んだ。
面前DVの具体例としては、子どもの前での夫婦げんかが目立つという。一方がもう一方を殴ったり蹴ったりする様子を、子が目の当たりにして泣きわめき、近隣住民が異変を察知して警察などに通報するケースが多い。県児童課は「『面前DV=虐待』の認識が普及してきた」との見方を示す。
心理的虐待以外は、身体的虐待21・8%▽ネグレクト(育児放棄)14・6%▽性的虐待0・9%-で、いずれの件数も前年度比で増えた。
虐待を受けた子の年齢別は、小学生が34・2%で最も多く、3歳~小学生未満22・5%、0~3歳未満19・9%と続いた。
県の担当者は「相談件数の増加は、児童虐待に対する関心の高まりと受け止めている。警察や児童委員らと緊密に連携して、児童虐待を減らしたい」と話している。(金 旻革)
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