新型コロナウイルスの流行「第7波」で医療機関や保健所の逼迫(ひっぱく)が続く中、政府が見直しを決めた感染者数の全数把握。ただ、引き続き把握する感染者の範囲などは自治体任せで、届け出対象から外れる陽性者の健康観察などの課題も残る。兵庫県の斎藤元彦知事は24日の会見で政府方針を一定評価しつつ、「コロナは国家レベルの対策が必要。国全体の方針が示されると思っていたが…」と戸惑いも口にした。
「全数把握が『感染を抑え込む』という本来の目的につながらず、統計作業になっていた面が否めない」。斎藤知事は会見で、従来の対応に改めて疑問を呈し、「見直しは全国知事会も要望していた」と政府方針に一定の理解を示した。
コロナは感染症法で全数把握が必要な「2類相当」に位置付けられるが、県は5日から、基礎疾患のない2~59歳の軽症者らを対象に「自主療養制度」を開始。県が配布した検査キットなどで陽性となれば、専用サイトに登録して療養する仕組みで、医師の診断がないため同法に基づく「感染者」に計上されない。基礎疾患のない軽症者でも医師の診断を介している政令市の神戸市を除き、兵庫では事実上、全数把握に見切りを付けているのが現状だ。
県は自主療養者も症状に変化があれば受診するよう呼びかけており、斎藤知事は今回の見直しでも「(把握の)対象にならない人が置き去りにならないよう、フォローの再構築が必要。医師会や市町と連携し体制を検討する」と強調。見直しにより医療機関や保健所の負担軽減は見込めるが、軽症だった感染者が重症化するリスクはあるからだ。
また、政府方針の制度の詳細は県にも伝えられていない。見直し内容も自治体に委ねられる面が少なくなさそうで、斎藤知事は「対応に齟齬(そご)が出かねない」との懸念も示した。保健所を設置する政令市や中核市ごとに判断することも考えられるが、「基本的には県全体で足並みをそろえたい」とした。(田中陽一、金 旻革)
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