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宮道成彦さんが撮影した須磨海岸の海中。マダイの幼魚(左)が細長い体が特徴のアオヤガラと出合う様子は観賞魚を見ているようだ
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宮道成彦さんが撮影した須磨海岸の海中。マダイの幼魚(左)が細長い体が特徴のアオヤガラと出合う様子は観賞魚を見ているようだ
海藻のカジメの中にアオリイカの卵(左下)が確認できる。右上はスズメダイ、アジの群れ。宮道成彦さんが撮影した
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海藻のカジメの中にアオリイカの卵(左下)が確認できる。右上はスズメダイ、アジの群れ。宮道成彦さんが撮影した
宮道成彦さんが撮影を始めたころ、1990年代の須磨海岸の海中。にごりが目立つ
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宮道成彦さんが撮影を始めたころ、1990年代の須磨海岸の海中。にごりが目立つ
須磨海岸の環境改善に取り組む須磨里海の会の吉田裕之会長(右)と森本明さん=神戸市須磨区須磨浦通6
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須磨海岸の環境改善に取り組む須磨里海の会の吉田裕之会長(右)と森本明さん=神戸市須磨区須磨浦通6

 神戸・須磨海岸の環境再生に取り組む「須磨里海の会」が、現在の海中を撮影した写真と動画を公開し、豊かな海が戻りつつある成果を報告した。海藻に産み付けられたアオリイカの卵をはじめ、スズメダイの幼魚、アジの群れが泳ぐ鮮やかな様子が映り、まるで水槽の観賞魚を見ているような感覚だ。神戸市立須磨海浜水族園の元園長で同会の吉田裕之会長(67)は「多様な魚介が生息できる環境が伝わる。多くの市民がきれいな海に関心を持ってくれる機会になれば」と話している。(津谷治英)

 かつての須磨はアサリがよく取れ、海岸付近で潮干狩りを楽しむ家族連れらの姿が見られた。だが、20年ほど前から水質が悪化。アサリの漁獲量は1995年の約40トンをピークに減少し、近年はゼロに近い状態が続いていた。

 須磨海浜水族園は2010年から原因究明を開始。アサリが生息する浅瀬の埋め立てや、餌となるプランクトンの減少が分かってきた。温暖化による瀬戸内海の水温上昇も挙げられた。外海の豊後水道付近に生息し、貝類を食べるナルトビエイが侵入し、とどめを刺された。

 同会の構成団体の一つ、須磨浦漁友会の森本明会長(59)も海の環境悪化を実感してきた。ノリ養殖業者だが、兵庫県内の生産量は1998年の約19億2千万枚から、昨年は約12億2600万枚と、この24年で約60%まで落ち込んだ。「このままでは須磨の漁業は立ち行かなくなる」と危機感を募らせた。

 そこで漁師仲間、学識経験者、市民らとともに、16年に須磨里海の会を結成。アサリ減少の調査を継承するとともに、アサリ保護網の設置、海藻のアマモの植え付けを行うことで生態系の回復にも努めてきた。海岸の美化を促進するために清掃活動にも取り組み、海を身近に感じてもらおうと、親子対象の学習会も企画。市民に海の環境の重要性を訴えてきた。

 調査には神戸市文化スポーツ局副局長で、水中写真家の宮道成彦さん(56)も参加。約26年前から須磨の海にもぐり、水質の変化をファインダーに収めてきた実績があり、里海の会の活動に賛同し、協力してきた。

 近年はほぼ毎月もぐり、今回は7、8月に撮影した作品を公開。同会が種を植えたアマモが成長している姿、アイゴの幼魚がそのアマモの先端を食べた跡をとらえた。また水深1メートル付近ではマダイの幼魚、細長い体が特徴のアオヤガラが泳ぐ様子も。多彩な生態系が戻ってきている様子が伝わる。

 「撮影を始めたころはかなりにごっていて、何も見えなかった。海底にごみも散乱していた」と宮道さん。しかし、ここ数年、変化に気付くように。「透明度は確実に戻ってきており、いろんな魚を見ることができる。海水浴が楽しめる足元で、小魚が泳いでいるのは素晴らしい。自然観察の場に育ててほしい」と願う。

 森本さんは「丁寧に手入れをすることで、生態系も回復することに確信が持てた。今後も続けたい」と話している。須磨里海の会は水中の様子を水中ドローンでも撮影。水槽のような光景の動画を公開している。

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