濃霧が強風で川を伝い、海へと流れ出す自然現象「川あらし」のシーズンを前に、国内有数の発生地である兵庫県豊岡市などの有志が集まり、知名度の向上に向けてラジオ放送や情報交換を行った。特別な地形や気象などあらゆる条件のそろった場所でしか見ることができない極めて珍しい現象だが、同市ではあまり浸透していない。メンバーは「幻想的な光景は、観光やまちおこしに一役買えるはず」と話している。(石川 翠)
同市と愛媛県大洲(おおず)市、鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市にはそれぞれ円山川、肱川(ひじかわ)、川内川が市内を貫き、毎年秋から翌春に観測される川あらしで幻想的な光景が見られることから、「日本三大川あらし」と位置付けられる。
大洲市の肱川では、10年ほど前からまちおこしとしてPRされてきたが、鹿児島県の気象予報士の今村聡さん(兵庫県川西市出身)が、薩摩川内市の川内川にも注目し、ともに盛り上げようと交流してきた。さらに豊岡市の円山川でも確認できることを知った今村さんが、「三大川あらし」と命名。3カ所の関係者が地道に周知活動を続けてきた。
このうち豊岡市の「円山川あらしプロジェクト」には、気象予報士や地元住民ら十数人が加わり、交流サイト(SNS)で情報発信などをしており、今年6月には一般社団法人日本気象予報士会から活動を表彰された。
こうした経緯を踏まえ、3市の関係者が豊岡市に集まり、同市と薩摩川内市のコミュニティーFMに出演してPRした。公立鳥取環境大学の重田祥範准教授も参加し、「山から平野への霧の移動はあるが、陸地から海に流れることが珍しい。肱川は風の速さ、川内川は幅の広さ、円山川は山を乗り越えてくる光景がそれぞれ特徴的」と話した。
気象データから発生予報をしてきた豊岡市出身の気象予報士の浜和宏さん(49)=京都府=は「風の向きや海温との気温差も重要」とする。河口付近に住み、シーズンになると毎朝確認しに行き、プロジェクトのメンバーに知らせる役割を担っている脇聡士さん(52)は「子どものころからきれいだなと思って見ていたが、こんなにも珍しい現象とは思わなかった」と話していた。
情報はツイッターアカウント「円山川あらし公式」などで発信している。
【川あらし】河口付近が山に挟まれた場所で風の勢いが強まり、盆地にたまっていた霧が川に沿って一気に海に流れ出す現象。毎年10~12月がピークで翌年3月ごろまで見られる。朝来市の竹田城跡などで有名な「雲海」は、川から上がる水蒸気が昼夜の寒暖差で霧になり辺りを覆う現象で、霧が分散せずに川面を移動していくのが川あらし。
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