兵庫県丹波市柏原町発祥のニュースポーツ「囲碁ボール」が今年、誕生から３０年を迎えた。町おこしを目的に生まれた競技は、手軽さに加え、戦略を立てる面白さ、一発逆転できるルール設定などが受け、県外にも熱心な愛好家を育ててきた。テレビ番組でも再三取り上げられ、ジャニーズアイドルも「ドはまり」するほど。生涯スポーツの世界大会「ワールドマスターズゲームズ（ＷＭＧ）２０２１関西」（２０２７年開催予定）ではオープン競技として採用が決まっており、関係者は「丹波から世界へ」と鼻息が荒い。（真鍋　愛）

　コンッ、カーン。

　柏原住民センター（丹波市柏原町）の体育館に、小気味いい音が響く。７月にあった囲碁ボールの兵庫県大会。丹波市を中心に、丹波篠山市や三田市、長野県や和歌山県から計８２人が集い、個人戦と団体戦で競い合った。

　長野県の小椋邦彦さん（６８）は、地元の「飯島町長杯」を制し、初めての出場。個人戦、団体戦ともに入賞は逃したが、「囲碁ボールは運もある。兵庫の皆さんと交流できて楽しかった」と笑顔を浮かべた。

　団体戦で２位と健闘した和歌山県の白坂登志子さん（７０）は「まだまだやな」と、悔しがる。競技歴１年で出場した大会で決勝に残り、「やみつきになった」白坂さん。「和歌山囲碁ボール協会」代表として指導し、この日の団体戦では同会３チーム中、２チームが決勝リーグに進んだ。「１０月の丹波市大会では優勝したい」と雪辱を誓った。

　○　●　○　●

　囲碁ボールのルーツは、人を将棋の駒に見立てた山形県天童市の「人間将棋」。現地で見学した旧柏原町長の安井幸太郎さん（故人）が「柏原でも似たものをつくれないか」と町職員に打診し、職員や地元住民ら１０人が考案した。

　その一人で「丹波市囲碁ボール協会」事務局長を務める前川豊市さん（７６）は「易しいルールと偶発性にこだわった」と振り返る。

　ルールは、子どもでも理解できる五目並べを参考にした。穴の周囲に数ミリの傾斜をつけることで思いがけず球が入ったり、はじき出されたりし、最後まで気が抜けないゲームにしたという。

　前川さんは「偶発性があるから、『負けてもしゃーないな』となるし、『悔しい』ともなる。それが魅力」と語る。

　○　●　○　●

　「囲碁ボールは、ＫｉｎＫｉ　Ｋｉｄｓ（キンキ・キッズ）の２人もお気に入り。『よくできた競技。もっと広まってもいいのに』と話していた」

　フジテレビの人気番組「ＫｉｎＫｉ　Ｋｉｄｓのブンブブーン！」で演出、チーフプロデューサーを務める浜崎綾さん（４０）が振り返る。

　同番組では昨年、ゲストと囲碁ボールに興じる企画を４回放送した。そのうち１回は、放送３００回記念。ゲストは２人の先輩の木村拓哉さんで、共演は十数年ぶりだった。浜崎さんは「キンキにとっても、番組にとっても大切な回。（堂本）光一さんと剛さんに何をやりたいか聞いたら、囲碁ボールを提案された」と明かす。

　浜崎さんによると、２人は相手の邪魔になる位置に球を置いたり、わざと自分の球に当てて点を狙ったりする戦略性や頭脳戦の一面を気に入っていたという。浜崎さんは「マットの凹凸の癖を把握するため、２人はスタンバイ中も練習していたほど。何回も取り上げた最大の理由は、２人が気に入ってたから」と打ち明けた。

　○　●　○　●

　囲碁ボールは「のじぎく兵庫国体」（０６年）のデモンストレーション競技などで実施され、じわじわと全国に広がった。

　「ここまで広く親しまれるとは思わなかった」と前川さん。今も東京、東北や四国など各地から問い合わせがある。５年後のＷＭＧ開催で「さらに発展させる好機」と捉え、だじゃれで締めくくった。「囲碁ボール、以降（囲碁）もよろしく！」

　　　　　◇

【囲碁ボール】五目並べとゲートボール、パターゴルフを掛け合わせたニュースポーツ。４９個の穴が開いた縦５メートル、横２メートルの人工芝マットで白黒各１０個のボールを打ち合い、縦、横、斜めのいずれかに３～５個の球を並べる。並んだボールの数や組数で勝敗を争う。個人戦と団体戦（ダブルス、トリプルス）がある。