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10月からコーヒーを値上げした粂慶治さん(左)。「何とか工夫したけど限界です」=神戸市中央区北長狭通1
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10月からコーヒーを値上げした粂慶治さん(左)。「何とか工夫したけど限界です」=神戸市中央区北長狭通1
六甲山の研修施設で日本語を学ぶ外国人技能実習生=5月、神戸市灘区六甲山町
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六甲山の研修施設で日本語を学ぶ外国人技能実習生=5月、神戸市灘区六甲山町

 32年ぶりに1ドル=151円台に突入し、止まらない円安が地域経済をむしばんでいる。2カ月で約15円と下落ペースは速く、輸入価格の上昇に伴う物価高騰は収まりそうにない。割安になった円を外国人観光客に使ってもらい、「消費喚起を」との声がある一方、円で受け取る賃金が目減りし、外国人技能実習生が来日を控える動きも出てきた。

 ■喫茶店悲鳴、全メニュー値上げ

 神戸・三宮の「純喫茶リノ」は今月、コーヒーや軽食など全てのメニューを50円値上げした。

 「500グラムのコーヒー豆の仕入れ価格が今月、500円上がった。さすがに負担が大き過ぎて」。2代目オーナーの粂慶治さん(54)が値上げの理由を話す。常連の男性会社員(51)も「何もかも値上げで仕方ないが、円安はどこまで進むのか」と心配顔だ。

 コーヒーは主産地ブラジルの天候不安などで、市場価格が2021年4月からの1年間で約2倍に高騰。要因は円安だけではないが、コーヒー生豆を輸入する石光商事(神戸市灘区)の担当者は「ここまで急激に為替レートが動いた経験がなく、状況は厳しい」。昨年から製品を順次値上げしているネスレ日本(同市中央区)も「企業努力で吸収しているが、さらに大きな変化があれば新たな対応が要る」と危機感を強める。

 ■観光、技能実習…外国人にとっては明暗

 円安は、新型コロナウイルス禍の入国制限緩和とも重なった。観光・宿泊業界では、インバウンド(訪日客)の消費拡大につながればという願いが強い。有馬温泉観光協会(同市北区)の金井啓修会長(67)は「外国人には日本旅行の割安感が強まるはず。逆に日本人は、海外から国内へ足が向くかも」と円安効果に期待を寄せる。

 一方で、外国人の「敬遠」への危機感も。賃金が米ドルに換算すると目減りするため、外国人技能実習生の日本離れが進みつつある。

 金属加工など約170社に実習生を紹介する監理団体、阪神金属協同組合(同市中央区)では、求人に対する応募の割合がコロナ禍前の約2倍から、円安で1・5倍に下がった。10年以上前は約3倍だったという。「特にベトナム人が集めにくい。円高になるまで待つ人も多いようだ」と、同組合の荒井秀行事務局長(50)。実習生確保に賃金を上げる企業もあるという。

 別の監理団体代表は、応募者がコロナ禍前から3、4割減ったと明かす。「日本は『安い国』というイメージが付きつつあり、外国人にとっての魅力が薄れている。円安が1、2年続くと、定員割れが現実味を帯びる」(大島光貴、広岡磨璃、赤松沙和、高見雄樹)

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