２０２３年度から公立中学校で始まる休日の運動部活動の地域移行。待ったなしの改革で、重要視されるのは指導者の確保だ。神戸市教育委員会では２１年度、スポーツ庁のモデル事業の一環として、民間業者への委託を市内５校で試行。専門的な指導内容についておおむね好評で、教員の負担も大きく減る一方、委託費の確保などの課題も見えてきた。（有島弘記）

　民間委託は国の予算１６７万５千円で公募。スポーツサービス業界大手で、今春時点で全国１２都道府県に指導者派遣の実績があるリーフラス（東京）と契約し、欠席連絡や事故対応を含めた休日活動の全てを任せた。

　鷹匠中（同市灘区）では陸上部で実施した。中学校の教員免許を持つ元アスリートと現役選手の大学生が休日に週１回、３時間の部活動を担当した。顧問も競技経験はあったが、走り幅跳びや砲丸投げなど多種目を教える専門性がなく、同中の陸上部主将は「分かりやすいように手本の動きを多めに示してくれた。（顧問が教える）平日は同じメニューで飽きがあったけど、休日はリレーとかゲーム性があって楽しめた」と振り返った。

　ほかの市内４校では専門外の顧問に代わり、競技経験者が指導した。

　市教委が行ったアンケートでは、全５校の顧問が負担について「大幅に軽減」「軽減」と回答。部員の反応も良く、「もっとうまくなりたい、成長したいと思うようになった」との問いに、８７・４％が「とてもそう思う」「そう思う」と答えた。一方で、顧問が指導する平日とのギャップに不満を持つ生徒もいた。

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　地域移行に伴い、民間委託を採用した場合、課題となるのは費用面だ。市町独自で行うとなると、自治体や家庭で負担する必要がある。保護者へのアンケートでは「今まで通りに学校内で」との反対意見や、「習い事になるので選び方が変わる」「その分しっかり指導を」など、さまざまな声が寄せられた。

　鷹匠中の小寺功一校長は「今後、平日が学校教育、土日は生涯スポーツへのスタートとなる。受益者負担があるべき姿で、この考えが定着しなければ（地域移行は）普及しない」と指摘。その上で、学校が違っても同じ競技なら会費を同額にするなど公平性の担保や、貧困世帯への補助など配慮を求める。

【部活動の地域移行】公立中学校の教員が担う部活動を地域団体や民間事業者に委託する改革。経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）によると、日本の中学教員は仕事時間が特に長く、部活などの「教育課程外活動」の占める割合が大きい。中教審は２０１９年、教員の働き方改革を進めるために部活の在り方を見直すべきだと答申した。学習指導要領では学校に部活実施の義務はなく、教員や生徒は参加しなくても構わない。

■派遣会社、安全性や学校との連携重視

　２０２１年度に神戸市内の中学校５校に指導者を派遣したリーフラス（東京）。指導者は全国大会の経験や指導年数など自社の基準に沿って採用するが、担当者は「重視しているのは技能より安全性」とし、緊急時の対応やハラスメント対策などの研修を行い、送り出している。

　学校側との連携も重視する。保護者の窓口になる統括責任者を置き、派遣指導者から毎回提出される報告書に基づき、顧問と情報を共有。神戸市教育委員会のアンケートには、顧問全員が同社との連携を評価した。

　休日の地域移行は２３年度から全国で始まるが、指導者の確保について同社の担当者は「（指導継続を望む顧問の兼業と）併用しないと足りない」と話し、なり手不足を危惧する。満足度の高いサービスを提供するためには、人材の育成も欠かせない。

　さらに、地域の事情も異なる。神戸市だけを見ても都市から農村まであり、学校の規模はさまざま。市教委の吉井良英児童生徒課長は「委託して終わりではない。地域ごと、種目ごとに形を考えないといけない」と強調。２２年度は、中学校に希望の運動部がない生徒が参加する「拠点校部活動」に別の民間の指導者を入れ、最適な制度設計を探っている。（有島弘記）