英ロンドン・大英博物館の世界的伝統文化保存プログラムに、兵庫県佐用町の「皆田(かいた)和紙」の保存会と佐用高校の生徒らが携わっている。かつて日本の僧侶や武将が身に着け、現在は廃れた和紙製の着物「紙衣(かみこ)」を、和紙作りのノウハウを生かして年内にも復元し、国内外に発信する。
紙衣は軽さと保湿性が特長で、現在の宮城や静岡、和歌山県で作られたが、ほとんど残っていない。
ファッションデザイナーとしても活躍するオーストラリアのモハジャ・ヴァ・ペサラン・ダフネ博士は、紙衣のもろくて洗えない独特の材質などにひかれ、文化として記録してきた。
大英博物館のプログラムは4年前に始まり、絶滅が危惧される文化情報保存の一環として、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマが着用する法衣(ほうえ)作りや、ブルキナファソの天然蚕糸技術など65件の記録が進む。ダフネ博士は紙衣の製造技術を日本では唯一、このプログラムに申請している。
同博士の友人で、海外向けに和紙のマーケティングを手掛ける矢野貴志さん(55)が佐用町に移住したことをきっかけに、古くから同町に伝わる皆田和紙の保存会と佐用高校が、復元に協力することになった。
メンバーは、個人から頼まれて紙衣を縫製する大原和服専門学園(奈良市)と、原紙を製造する黒谷和紙協同組合(京都府綾部市)を見学。9月には同校農業科の生徒4人も加わり、和紙作りに取り掛かった。
皆田和紙は地元産のコウゾを原料に、皮を煮込んで木の棒でたたいてほぐし、水に溶いてすく。
「繊維をたたいてほぐすのは本当に大変。和紙で本当に着物ができるのか半信半疑だけど、精いっぱい貢献したい」と同校3年の平田奨真さん(17)。
保存会の山本幹雄会長(65)は「皆田和紙がプロジェクトに携われることを誇りに思う。生徒たちにも作業を通して、紙作りの伝統や苦労を感じてもらえたらうれしい」とほほ笑む。
乾燥させた紙をもんで柔らかくしたり、着物用に貼り合わせたりする作業を経て、同校家政科の生徒が縫製して仕上げる。製作の様子はダフネ博士がリポートにまとめる。(勝浦美香)
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