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思春期の子どもについて講演する大阪医科薬科大学病院小児科・非常勤医師の金泰子さん=神戸市中央区磯上通3、こうべ市民福祉交流センター
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思春期の子どもについて講演する大阪医科薬科大学病院小児科・非常勤医師の金泰子さん=神戸市中央区磯上通3、こうべ市民福祉交流センター
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 思春期だからと分かっていても、理解を超える子どもの言葉や行動に悩んだことはありませんか。「思春期はお父さんもお母さんも子ども自身も、みんなが嵐の中を行く時期」と、大阪医科薬科大学病院小児科・非常勤医師の金泰子さんは言います。子どもとうまく向き合い、コミュニケーションをとるこつはあるのか-。金さんに聞きました。

(2022年10月に神戸市社会福祉協議会が主催した講演を再構成しています)

 ■思春期ってなに?

 10~18歳ごろが思春期とされ、第2次性徴が始まる小学校高学年から高校生の間といわれています。特に、私たち大人が扱いに悩み、困る時期は小学校高学年から中学生ぐらいでしょうか。悲しいことですが、10~19歳の死因の上位に自殺が挙げられます。それくらい思春期は嵐の中を行くような厳しい時期なのです。

 思春期はまた、「自我同一性を獲得する時期」ともいわれ、「誰かに求められる私」ではなく「私が私であろう」と考えた時に、「自分はどんな人間か」「どんな値打ちがあるのか」「なぜ生きていくのか」「何のために生きていくのか」を考え始める時期なのです。

 今までは大人に言われるがままだった自分を客観的に見られるようになってくると、自分が万能ではないということに気付きます。他人と比べると、いくら頑張ってもかなわないことがあり、うまくいかないと自分は駄目だと思うことがあります。

 そうすると、だんだんと人の目や評価が気になってくる。できることよりも、できないことの方が大事なことに思われ、自信をなくしがちです。その一方で、親や周囲の人に対して、「大人はつまらん」と傲慢(ごうまん)不遜な態度をとることもある。激しく揺れる振り子のように、思春期の子どもの心は動きます。

     ◇

 ■「真っ向勝負」しない

 思春期には、自分の衝動性や感情をコントロールできずに、疾風怒濤(どとう)といわれるがごとく、本人も戸惑うほどの感情が噴出して、大人を激しく否定し反発します。なのに甘えるんです。私の息子たちも(親に対して)「うるさいわ!」と言ってドンドンと音を立てて階段を上がっていったと思ったら、キッチンにいる私の肩に頭を乗せて「何かうまいもんない~?」と聞いてくる。これこそが子どもの反発と依存、思春期の子どもの二面性です。「どの口で!」と言いたくなるのをぐっと我慢。真っ向勝負するとお互いにしんどくなります。

 反抗は成長の証しだと分かっていても、つい大人は善悪や道理のみで説いてしまう。思春期の子どもは、「黒」と分かっていても「白」と言う。「誰がどう見ても黒でしょ!普通の人は黒に見える!」と言いたいところですが、「お母さんには黒に見えるけど、今のあなたには白に見えるんやね」と流すことも必要です。

 正しいことばかり言う親と対立し、気まずい関係になる。子どもは話さなくなります。この時期の子どもは、親に反抗しながら、自分が理解され、受け入れられているという自信がないのです。他人と比較せず、「あなたが大事よ」「誰もが通る道だけど苦しいよね」「私にもそんな時期があったよ」「見守っているよ」と伝えてあげてください。それは言い合いの最中ではなく、子どもの肩の力がふっと抜けた時、お互いが穏やかに過ごしている時に優しい口調で伝えてくださいね。

     ◇

 ■起立性調節障害にも注意

 女性は初潮や体形の変化、男性は声変わりや精通など、「第二の誕生」といわれるほど、内分泌系や自律神経系の変化が容赦なくやってきます。戸惑いや拒否感がある子もいます。

 加えて、女子は容姿や体重を気にして、摂食障害を起こしやすい時期でもあります。思春期の心は成長途中で不安定になりがちですが、思春期に統合失調症やうつ病、双極性障害(そううつ病)などの精神疾患の症状が発症することもあります。見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたり、感情が大きく揺らぐときには専門機関に相談することが必要でしょう。

 また「起立性調節障害(OD)」にも注意が必要です。自律神経系がうまく働かず、起立時や午前中の低血圧によりさまざまな症状が起こります。約8割に心理社会的ストレスがあり、不登校と関連が深いともいわれています。OD症状のために登校ができない状況が起こる一方で、不登校で自宅にこもる生活によってODが発症、悪化することもあります。

 実は、新型コロナ禍による休校中、子どもたちの生活リズムの乱れと不活動が原因と考えられるOD症状の相談が増えました。午前中は調子が悪いのに、夜にはテレビを見て笑っている。こういう姿を見ると「サボっているのでは」と思われがちですが、症状が長く続き、不登校などで社会生活に困難を来す場合には、ODの専門家や思春期の子どもの診察にたけた先生に相談してほしいです。

 生活指導により水分、塩分を十分に取って生活リズムを整えるだけでも、症状は随分と改善されます。薬物療法も行いますが、生活指導だけで良くなる子は少なくありません。心か、体かと区別せず、思春期の子どもの心身の変化を理解し、言葉や行動の背景を考え、本当に困っていることに早く気付くことが大切です。(まとめ・津田和納)

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