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ランナーにエールを送る有森裕子さん
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ランナーにエールを送る有森裕子さん

 1992年バルセロナ五輪、96年アトランタ五輪の2大会連続で女子マラソンのメダリストとなった有森裕子さんが、神戸マラソンの大会ゲストとして参加する。第1回から携わり、大会を熟知する有森さん。10回の節目を迎える神戸マラソンに寄せる思いや、ランナーへのエールを聞いた。(聞き手・永見将人)

 -神戸マラソンは10回目を迎えます。

 「毎回行っていますが、あのスタートのシーンにはいつも感極まります。阪神・淡路大震災があった神戸で、(復興の象徴の)ヒマワリにちなんだ黄色の手袋と『しあわせ運べるように』の歌。継続したメッセージ、大切なものを伝え続けるということは、大会として非常に大切だと思います」

 「私は以前、『スポーツの力』なんてことを平気で言っていました。けれど、いかに傲慢(ごうまん)だったかということに、五輪・パラリンピックがあったこの2、3年で気付きました。スポーツそのものに力があるんじゃなく、人間が力を持っているんです。スポーツが何かしら寄与できるものとか、促せるものがあるというだけ。スポーツを通して社会に関わったり、メッセージを伝えられたりということが、スポーツの価値。神戸マラソンにはそれがあると思います」

 -神戸のコースの印象は。

 「脚にくるアップダウンもあり、走り方の難しさもあるコース。このコースをきっちり走れる力をつければ、ほかの大会につながります。その点で、市民ランナーの発掘という意味もある大会ですね。10月の東京レガシーハーフマラソンで3位になった山口遥さんも、(2019年の)神戸マラソンでいきなり優勝して頭角を現しました」

 「ほかの大会にはないロケーションで、本当に神戸らしい大会。一方で、裏に六甲山があり、コース取りに苦労したはずです。交通規制で困る人もいる。こういう場所を走らせてもらえるという喜び、ありがたさも知っておいてほしいですね」

 -コロナ禍で3年ぶりの開催です。

 「久しぶりにマラソンに戻ってきた人には、(体の状態と)感覚がかみ合わない人もいて、無理をしてしまいがちです。コースも簡単ではありませんし、『久しぶり』ということをブレーキにして、3年ぶりを楽しむというのが今回の一番のポイントですね」

 -道具も進化しました。厚底シューズのブームは市民ランナーにも波及しています。

 「使いこなすには、それなりに体を整えないといけません。安易なシューズではないんです。人間の動きの機能を一つ省いて進ませるので、支える筋肉がないと変な動きになり、ゆくゆくは体を痛めちゃう。それなりの時間をかけた準備をした上で、使うことが鉄則です。シューズのみならず、全ての道具にいえること。靴下1枚でも『新品を履くな』と言うぐらいですから」

 -大会直前の心構えを。

 「過剰に周りに惑わされず、食べ物も行動も、気負わず通常通りに。でも、(コロナ禍で)大会に出ていないと、だんだん準備も忘れるんですよね。そういう意味では、いつもよりは早めに落ち着いて準備し、慌てないことです。一歩一歩踏みしめて、久しぶりに走れる喜びをゴールに持っていってほしい。見える応援、見えない応援があるけれど、すべてを力にしてほしいですね」

【ありもり・ゆうこ】岡山県出身。日体大を卒業後、実業団のリクルートに入社。トップランナーとして活躍し、女子マラソンでは1992年バルセロナ五輪で銀メダル、96年アトランタ五輪では銅メダルを獲得。2007年の現役引退後は、各地の市民マラソンでゲストを務めるなど競技の普及に尽くす。日本陸上競技連盟副会長。55歳。

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