国内で年間約1億枚が廃棄される布団やマットレスなどを再生させる取り組みが、兵庫県の北播磨地域から全国に広がりつつある。寝具を「資源」と捉え、廃棄扱いとなった布団を親子がそれぞれ経営する会社で回収し、羽毛や綿などを取り出してリサイクル。再加工された素材は再び布団などに使われ、脱炭素にも貢献している。
リサイクル業「フロンティア」(兵庫県多可町)が業務委託する同県西脇市和布町の工場。自治体や個人から不要になった寝具が届き、敷地内に積み上げられている。同社は計7カ所の工場で、羽毛や綿、ポリエステルなど素材に分けて再生している。
社長の内橋毅さん(60)は約40年前から、播州織産業が盛んな地で縫製業を営んでいた。だが1990年代、海外製品との競争や国外への生産移転が進んだことに危機感を持った。そんな時に目にしたのが、ごみ回収所で粗大ごみの寝具を持ち込むトラックが列をつくる様子。「これを全部再生できたら勝ち抜けるかもしれない」とひらめき、寝具のリサイクル業に転換した。
羽毛布団1枚には水鳥200羽分の羽根が、綿の布団では綿畑100坪(約330平方メートル)分の綿花が使われているといわれる。寝具の中綿は染色をしていないため、衣服よりも再生が容易。工場で羽毛や綿を抜き取って洗浄、殺菌し、布団や座布団、クッションなどに再加工している。
長男の堅志さん(31)も、寝具リサイクルに可能性を感じた。大学卒業後、東京のIT企業でエンジニアとして働いていたが、持続可能な社会につながる取り組みを全国に広げようと思い立った。2019年に自身も東京で寝具回収サービスの会社を立ち上げた。
廃棄された寝具を粗大ごみとして焼却している自治体と契約を結び、時に処分料金を受け取って寝具を回収する。「フロンティア」は地元の西脇市や多可町を含む関西の自治体と契約。東京に拠点を置く堅志さんの会社「ユニ」は、東日本の自治体から請け負い、両社で全国展開を目指す。
両社が引き取った古い寝具の再生率は9割に上る。焼却時の二酸化炭素(CO2)の削減に貢献し、脱炭素の面でも評価を受ける。堅志さんは「家庭で余っている不要な布団も引き取れば、莫大な資源が眠っていることになる」と、寝具が焼却されることのない未来を描く。(伊田雄馬)
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