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高松由美子さんは民事訴訟の際に苦労して集めた事件記録の一部を手元に置いている=兵庫県稲美町(撮影・小林良多)
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高松由美子さんは民事訴訟の際に苦労して集めた事件記録の一部を手元に置いている=兵庫県稲美町(撮影・小林良多)
高松聡至さん(母由美子さんの了承を得て遺影を撮影)
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高松聡至さん(母由美子さんの了承を得て遺影を撮影)

 重大少年事件の記録が各地で廃棄されていた問題で、最高裁によって廃棄の経緯が調査される52件の中には、1997年に兵庫県稲美町で起きた集団暴行死事件も含まれていた。この事件で長男を失った高松由美子さん(68)=同町=は「廃棄に携わった職員たちはその時何を考え、感じていたか。事務的な調査に終わらせず、内面にも踏み込んで調べてほしい」と力を込めた。

 事件は8月に発生。中学時代の友人を含む少年10人が深夜、聡至(さとし)さん=当時(15)=を自宅近くの神社に呼び出して暴行を加え、聡至さんは9日後に死亡した。加害少年らは匿名のまま少年審判で裁かれたが、高松さんは民事訴訟を起こして記録の一部を取り寄せ、大切に保管している。

 「事件記録には奪われた息子の命が宿っている」と語る高松さんは、事件当時から資料が事務的に扱われることが気になっていた。民事裁判の際も大量の資料が机の上に「ドシン」と投げ置かれた。弁護士らに悪気はないと分かっていたが、「毎回殴られたような気持ちになって『投げるな!』と叫びそうだった」。

 「あれほど大量の、ずっしりと重い資料。シュレッダーにかけたのか焼いたのか知らないが、廃棄を命じられた職員は手にした時に何も感じなかったのか」。改めて廃棄されたことへの悔しさも語り「息子と同様に、加害少年たちの過去も消えてしまった。更生のためには必要な記録。裁判所の行為は、被害者と加害者の両方を見捨てている」と憤った。

 事務的、機械的な取り扱いで処分された事件記録。高松さんは「経緯の調査も『いつ誰の指示で』など簡単な項目だけで済まされるのではないか」と懸念する。「もしそうなれば二重に失望する。せめてどこかに人間の心があると願いたい」と漏らした。(勝浦美香)

     ◇

【兵庫県稲美町の集団暴行死事件】1997年8月23日深夜、県立高校1年の高松聡至さん=当時(15)=が、自宅近くにある神社の境内で中学の同級生らに集団暴行を受け、9月1日に亡くなった。加害者で当時14~16歳の少年10人は傷害致死容疑で逮捕、送検され、少年審判を経て少年院に送致された。聡至さんの遺族は2000年、少年と保護者に損害賠償を求めて提訴。神戸地裁姫路支部の一審判決は保護者の責任を認めなかったが、04年の大阪高裁控訴審判決は、少年10人に加え保護者にも連帯して賠償金の支払いを命じた。

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