首都圏で回収した菓子や牛乳の紙パックと、六甲山の間伐材から作ったTシャツを神戸市内の児童養護施設の子どもたちに届けよう-。神戸市が食品メーカーのネスレ日本(同市中央区)と連携し、前例のない取り組みを進めている。神戸に縁があるかどうかにかかわらず多くの人が協力し、紙パックは想定を大幅に上回るペースで集まっている。(永見将人)
首都圏の人が神戸のためにできることは、ふるさと納税や産品購入以外にないのだろうか-。企画は、同市環境局から4月に東京事務所に着任した浜住康弘都市プロモーション担当係長(39)のそんな問いから始まった。
環境局にいた頃、ネスレ日本が日清紡グループと共同で自社製品の紙容器から衣服を作る取り組みを始めたことを聞いていた。今回、これに着目して協力を依頼するとネスレ日本も賛同。工場で紙糸(かみいと)を作って生地素材に仕上げ、縫製までの工程でかかるコストも負担してくれることになった。
一方、紙パックから紙糸を作る際に、木材を混ぜ合わせることから、浜住係長は「六甲山の間伐材を使えないか」と提案。山の手入れで発生する間伐材は山中に放置されるケースが多いといい、子ども服の材料にすれば有効活用できる。
木材は神戸市公園緑化協会から譲り受けることになり、間伐材を細かくする加工は、木材販売業のシェアウッズ(同市兵庫区)が請け負うことになった。同市によると、紙パックと間伐材から紙糸を作る取り組みは全国初という。
10月、「東京圏から神戸へ想いを紡ぐプロジェクト」と題し、回収箱を同市東京事務所(千代田区)や渋谷区のカフェ「ネスカフェ原宿」、各地の共用オフィス「ウィーワーク」など都内と横浜市の計23カ所に設置。ネスレ商品の外装袋や容器のほか、牛乳などの紙パックも含めて回収を求め、メールマガジンでも呼びかけた。
ウィーワークが紙パックと引き換えに菓子をプレゼントする企画を始めるなど、予期しなかった盛り上がりを見せ、3~4キロ分が入る回収箱が次々と満杯に。既に今回の計画に必要な24キロをはるかに上回る量が集まっており、100キロを射程に捉えるペースという。
「気軽に参加できる取り組みを、と考えていたが、神戸ゆかりの人以外にも関心を持ってもらい、予想以上のペースになった。皆さんの思いをしっかり紡いで神戸に届けたい」と浜住係長。回収は15日まで続け、全てを紙糸にする。今回使わない分は、ネスレ日本が有効活用するという。
首都圏の人たちの思いがこもったTシャツは来年2月ごろに完成する。神戸にちなんだ絵柄をあしらい、市内13の児童養護施設で暮らす約400人全員に届けられる予定だ。
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