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大阪・関西万博での旅客輸送に向けてスカイドライブが開発する機体「SD-05」(c)SkyDrive
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大阪・関西万博での旅客輸送に向けてスカイドライブが開発する機体「SD-05」(c)SkyDrive
昨年9月のドローンサミットで展示されたテトラ・アビエーションの機体=神戸市中央区港島中町6
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昨年9月のドローンサミットで展示されたテトラ・アビエーションの機体=神戸市中央区港島中町6

 2025年の大阪・関西万博の目玉の一つとして、開発が進められている「空飛ぶクルマ」。兵庫県内では、神戸空港や淡路島と万博会場をつなぐ旅客輸送の構想があり、2年3カ月後の開幕に注目が集まる。実用化が進めば、山間部からの救急搬送や、交通渋滞を避けた通勤利用などにも拡大するという。上空に「クルマ」が飛び交う-。そんな世界が、そう遠くない将来に実現するかもしれない。

■乗れるドローン

 アニメや映画で、たびたび夢の乗り物として描かれてきた空飛ぶクルマは、道路を走り、タイヤを水平に変形させて空へ飛び立つ。だが、実際に開発が進められている機体の多くは、飛行に特化している。

 国土交通省によると、空飛ぶクルマに明確な定義はなく、「電動」「自動操縦」「垂直離着陸」が特徴という。つまり、人が乗れるドローンだ。個人が日常的に使うことを想定し、「クルマ」と表記している。

 大阪府や機体メーカーなどは、25年に万博会場と大阪港周辺や空港などの2地点間を結ぶ旅客輸送を目指しており、政府は運航ルールや離着陸場の整備などの制度設計を急ぐ。

■加速する開発

 このうち、ベンチャー企業、スカイドライブ(愛知県豊田市)が開発する機体「SD-05」は、2人乗りで全長9・4メートル、高さ2・7メートル。機体上部の12基のモーターとプロペラが動力となり、設計上の最高時速は100キロ、最大航続距離は約10キロという。

 この機体は21年10月、国内で初めて、航空法に基づく国交省の機体性能審査を受けることになった。設計や構造などの安全性の検証に加え、24年以降の飛行試験も予定する。同社の担当者は「航空機と同レベルの安全性を担保するため、部品一つ一つの耐久性を証明していく」と説明する。

 世界初の実用化に向けて、各国の機体メーカーによる開発競争は激化している。独ボロコプターは19年にシンガポール都市部で有人試験飛行を成功させ、24年のパリ五輪で「空飛ぶタクシー」を計画。トヨタ自動車が出資する米ジョビー・アビエーションは22年10月、日本での事業展開のため国交省の審査を受けることが決まった。

■機運醸成

 兵庫県内でも、万博に向けた機運が高まりつつある。県と民間企業が人材育成に取り組むほか、淡路島に拠点を置く企業が離着陸場の整備を検討。9月に神戸市であったドローンサミットでは、東大発ベンチャーのテトラ・アビエーションの機体が注目を集めた。

 一方で、新たな移動手段に対する市民の不安解消も課題だ。万博では海上飛行を前提にしているが、将来的には都市間移動での活用も想定される。

 大阪府は今年3月、大阪城公園(大阪市中央区)で国内初の有人実証飛行を計画している。米リフト・エアクラフトの1人乗りの機体(全長4・5メートル)を使い、市民に空飛ぶクルマのある社会を体感してもらう。大阪府成長産業振興室の時岡貢副理事は「機体が開発されても、乗る人がいなければ使えない。安心して乗りたいと思ってもらえるよう、理解を広げる取り組みを進めたい」と話す。

■クルマ飛び交う未来へ

 大阪府などは、万博での旅客輸送を皮切りに、30年に操縦士がいなくても移動ができる自動運転化、35年に機体の大型化や量産化を描く。

 機体の量産化のためには、バッテリーやモーター、プロペラなどの部品を安価に調達する仕組みが欠かせない。機体の運用や、離着陸場の整備や管理を担う事業者の必要性も指摘されており、府は関連の新たな産業の創出にも期待する。

 時岡副理事は「ものづくりのまちの土台を生かし、万博を機に事業者が参入できる仕組みづくりを進める。世界の都市間競争に打って出ることで、『大阪は空飛ぶクルマの聖地だ』と感じさせたい」と意気込む。

 一方で、スカイドライブが追求しているのは、コンビニの駐車場に停車できる、乗用車と同じくらいのコンパクトな機体だ。同社の担当者は「クルマが空を飛んでいるというのを、当たり前の景色にしたい。最終的には、道を走り、飛行もする機体の開発を目指している」と話す。

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