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中学生の防災小説が毎月掲載される高知県土佐清水市の広報誌
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中学生の防災小説が毎月掲載される高知県土佐清水市の広報誌
オンラインで開かれた第二回全国防災小説交流会で発表する清水中学校の生徒ら(土佐清水市提供)
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オンラインで開かれた第二回全国防災小説交流会で発表する清水中学校の生徒ら(土佐清水市提供)
昨年11月に開かれた防災小説全国交流会で、オンライン発表する清水中学校の生徒ら=高知県土佐清水市(同市提供)
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昨年11月に開かれた防災小説全国交流会で、オンライン発表する清水中学校の生徒ら=高知県土佐清水市(同市提供)

 大地震が起きたことを想定し、自分を主人公にして物語を書く。四国のある中学校で生まれた「防災小説」の取り組みが、全国の学校に広がりつつある。そのとき、どんな被害があり、自分はどう行動するのか。学び、想像して文章にすることで、若い世代の防災意識に変化が芽生え始めたという。教員や専門家はさらなる普及に期待する。

■南海トラフ巨大地震を想定

 「中学校から見る街は、黒い津波と茶色いほこりに飲み込まれていた。体育館は避難所になって(中略)親とはぐれて泣く子どもの姿、若い人に押されてこけそうになる高齢者の姿があった」

 「思い出の家はただのがれきの山と化していた(中略)町がこんなことになるなんて」

 「(避難所では)食料の配給がうまくいかず、中にはまともに一人分の食料を受け取れない人も…」

 いずれも高知県土佐清水市にある市立清水中学校の生徒が書いた「防災小説」だ。想定は、近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震。四国最南端の足摺岬がある同市は、最大34メートルもの津波が予測される。

■「またその話か」無関心な生徒も

 清水中が小説づくりを始めたのは2016年秋。それまでも防災教育には熱心な学校だったが、「またその話か」と無関心な生徒も少なからずいた。

 その頃、同市を訪れた慶応義塾大の大木聖子准教授(44)=防災教育=に教員が相談したところ、「自分が主人公のシナリオを書かせてみては」、そう提案されたという。決めたルールは「物語は必ず希望を持って終えること」。

 やってみると生徒たちの様子が変わったと、当時校長だった岡崎哲也同市教育長(62)は振り返る。被害想定や避難ルートなどこれまで学んできたことに改めて向き合い、小説に盛り込んだ。

■市の広報誌に掲載

 3年の女子生徒(14)は「悩んだけど、書くうちに学んだ防災の知識を思い返した」と話す。小説では地震で変わり果てた街、過酷な避難生活を想像して書き込む一方、日ごろの備えが功を奏し、「市内の死者0人」だったとも記した。「家族でも南海トラフ地震について話し合うようになった」

 「防災小説」発祥の地となった同市は、毎月の広報誌に1人ずつ防災小説を載せ、備えを促す。21年には全国から複数の中学校が参加し、取り組みを発表し合う「防災小説交流会」が始まった。

■5校がオンラインで交流会

 昨年は東京、愛媛、埼玉などから5校がオンラインで参加。その一つ、北海道釧路市立音別中学校は21年度から授業に取り入れる。

 日本海溝・千島海溝で巨大地震が起きた場合、20メートル超の津波が予想される同市。生徒たちは夜に発生した場合の避難方法などを考えながら、小説を書く。同中の白井正憲教頭(50)は「生徒は真剣で、危機感が伝わってきた」と手応えを口にする。

 大木准教授は「地震のことを書こうと思うと、まず地震を知らないといけない。学び、想像することで災害を『自分ごと』にしてほしい」と取り組みの一層の広がりを後押しする。

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