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スピノートに3年前に書き込んだメッセージを見せる山本圭史さん=神戸市中央区加納町6
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スピノートに3年前に書き込んだメッセージを見せる山本圭史さん=神戸市中央区加納町6
スピノートの画面。赤いノートは自身の書き込み、黄色いノートは他者の書き込みがあるマス(山本圭史さん提供)
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スピノートの画面。赤いノートは自身の書き込み、黄色いノートは他者の書き込みがあるマス(山本圭史さん提供)
アプリ「スピノート」ダウンロードページのQRコード
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浜日出夫氏
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浜日出夫氏

 阪神・淡路大震災からまもなく28年。記憶の継承は年々難しさを増す。世界中にデジタルのノートを展開するアプリ「spinote(スピノート)」でこれを支援しようと、神戸市西区出身の建築家、山本圭史さん(42)=東京都港区=が17日、神戸・三宮の東遊園地で開かれる「1・17のつどい」を訪れた人に活用を呼びかける。「大切な人を思う言葉や震災で培われた絆、未来に向けた希望のメッセージを自由に書き残して」-。

 スピノートは、世界を30メートル四方のマス目に分け、位置情報からその場所を訪れた人だけが読み書きできるノートを配置したアプリ。全世界で5700億冊作られ、メッセージは永久に蓄積される。

 山本さんが友人と2人で開発した。きっかけは喫茶店や民宿、無人駅などにある、自由に書き込めるノートに興味を持ったことだ。

 「自由ノート」「交流ノート」「足跡ノート」…。全国各地を調べて回り、3千種類近くをリストアップした。「こんなに面白いものが世界中にあったら」とアプリを作り、2019年に配信を始めた。「その場に行って初めて感じる気持ちが大事」と他の場所からは情報のやりとりができない不便さにこだわり、昨年12月には国際特許も取った。

 さまざまなノートを研究する中で思い至ったのが、災害などの記憶継承という役割だ。代表的なものに、広島の原爆資料館に置かれた「対話ノート」がある。被爆者や遺族の思い、来館者の感想、平和への祈りや誓いが綿々とつづられてきた。

 実物のノートは保存や管理に課題があるが、スピノートならいつまでも残せ、複数の人が同時に書き込むこともできる。アプリ配信後の最初の1月17日となった3年前、山本さんは最終の新幹線に飛び乗って東遊園地へ。震災で旧兵庫県北淡町(現淡路市)の祖父母の家が壊れ、近隣の女性が亡くなったことに触れ「亡くなられた方、壊された風景、それにひも付く記憶や思い出は、決してなくなっていないと思います。(略)今後もみんなで紡いでいけたなら」と記した。

 20年には、東日本大震災で津波に遭った岩手県釜石市の学校跡地にできたスタジアムで、当時の在校生らが思い出を書き込む企画を市とともに進めた。新型コロナウイルスの感染拡大で直前に中止になったが、他にも構想を温める。

 まずは今年の「1・17」を重要な機会と捉える。同じ場所で3年前の自らの言葉と向き合った時、何を感じるのか。それを踏まえて、今の思いを刻もうと考えている。

     ◇     ◇

■「継承の装置として有効」 専門家も期待

 「震災を経験していない人も、その場所に行けば記憶を共有できる。継承の装置として有効だ」。広島の被爆地や阪神・淡路大震災の被災地で「記憶と場所」の関係を研究してきた慶応大名誉教授の浜日出夫さん(68)は「スピノート」に期待を寄せる。

 浜さんは、スピノートを記念碑や慰霊祭と同じように「記憶の地層を掘り起こすためのツールの一つ」と位置付け、その場所に行かなければ読んだり書いたりできない点に着目。「わざと不便にして、場所と記憶を結びつける点が画期的」と評価する。

 県立西宮高校を卒業し、大阪大在学中は神戸市灘区に暮らすなど、兵庫への愛着は強い。震災では兵庫県尼崎市内の祖父母宅が半壊する被害に遭った。今年の1月17日も地震が起きた5時46分を東遊園地で迎え、スピノートに投稿するつもりだ。

 「過去を振り返るだけでなく、未来への願いも積み重なる。スピノートが関わることで、何が起こるかを楽しみにしている」と話す。

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