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母の正子さんの遺影と目を合わせる佐藤悦子さん=17日午前6時17分、神戸市中央区、東遊園地
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母の正子さんの遺影と目を合わせる佐藤悦子さん=17日午前6時17分、神戸市中央区、東遊園地
亡くなった佐藤正子さん(佐藤悦子さん提供)
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亡くなった佐藤正子さん(佐藤悦子さん提供)

 阪神・淡路大震災から28年となった17日。母の正子さん=当時(65)=が行方不明となった兵庫県加古川市の介護士、佐藤悦子さん(59)は神戸市中央区加納町6の東遊園地を訪れ、遺影と向き合いながらそっと手を合わせた。

 正子さんが1人で暮らしていた実家は、同市須磨区の文化住宅1階。地震があった直後に電話をしたが出ず、1時間ほどすると呼び出し音も鳴らなくなった。「どこかに避難している」。まだそう考えていた。

 その日の夜、テレビのニュースで映った実家の近くは不気味なほどに真っ暗だった。「なんでやろう」。翌日、同市西区に住んでいた兄が訪ねてきた。開口一番に「おふくろ来てるか」と聞かれ、来ていないことを伝えると「もう家ないねんぞ」。顔色が変わった。

 実家へ向かった悦子さんが見たのは、焼け焦げたがれきの山だった。「家は全壊、全焼で、骨のかけら一つ見つかりませんでした」

 正子さんはおっとりした性格だったが、パートを掛け持ちして朝から晩までせわしなく過ごす働き者。震災の2日前、悦子さんが「京都旅行のお土産を渡したい」と電話し、正子さんが「わかった」と答えた会話が最後だった。

 「自分が火事の前にもっと早く駆け付けていたら、もしかしたら」。行方不明者として捜索を続けたが、どこに出かけるにも乗っていた自転車は家に止まったまま。今でも区切りはつけられていないが、「亡くなったと思い込むしかない」と目を伏せる。

 友人と訪れた東遊園地。遺影を地面に立てかけ、今年もこの日が来たと、心の中でつぶやく。毎年、花束と一緒に供える手紙を持参する。「空の上から見守ってください」

【特集ページ】阪神・淡路大震災

神戸震災28年
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