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震災で父母と姉を亡くした野田徳彦さん=17日午前7時31分、神戸市中央区、東遊園地
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震災で父母と姉を亡くした野田徳彦さん=17日午前7時31分、神戸市中央区、東遊園地

 「やっと家族に直接、感謝を言えた」。神戸市中央区の東遊園地で、野田徳彦さん(65)=神戸市長田区=は手を合わせ、目を潤ませた。震災以降、あえて遠ざけていた故郷の地で、初めて追悼の時を迎えた。

 あの日、長田区の実家が全壊。父の武徳さん=当時(75)=と母の綾子さん=当時(75)、姉の和江さん=当時(41)=を失った。

 勤務していた東京の自衛隊で同僚から震災を知らされた。実家に電話したがつながらず、仕事を終わらせ、すぐに車で神戸へ。2階建てだった実家は跡形もなかった。家族の姿はなく、逃げられなかったと悟った。瓦や畳をあさったが、3人は出てこなかった。

 見つかったのは1カ月後。警察から連絡を受け、変わり果てた3人を目の当たりにした。

 九州出身の両親は明るく、姉は厳しく、会話の絶えない家族だった。「徳彦の人さし指の爪は太い」「姉さんのは細すぎる」。ささいなことで4人で笑った。

 つぶれて曲がった遺体を前に、姉の指に目がいった。「僕の家族で間違いありません」。温かな3人の姿を思い出し、胸が締め付けられた。悲しい対面に、つらい思い出ばかりの神戸にはもう戻れないと思った。

 昨年、がんと宣告され、退職を機に27年ぶりに神戸に戻った。家族を近くに感じたいと思い、東遊園地に足を踏み入れた。「慰霊と復興のモニュメント」で初めて見る両親と姉の銘板に涙が出た。

 なんでもっと早く神戸に帰らなかったんだろう。会えたらしたい話がいっぱいあった。一緒に旅行したかった-。尽きない後悔があふれた。

 「でも、来てよかった。今まで生きてこられたのは3人が見守ってくれたおかげかな」。話しながら、また遠くを見た。

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