19日発表された芥川賞の受賞者に兵庫県内出身・在住の井戸川射子さん(35)が選ばれたのを受け、母校の関西学院大学(西宮市)では喜びの声が上がった。死生学について学んだゼミ時代の恩師は「自分の中からあふれ出す世界観を書き続けてきた人。これからもありのまま進んでほしい」とエールを送った。
井戸川さんは2006年に関学大の社会学部に入学。3、4年では藤井美和教授(死生学)のゼミで16人の仲間と一緒に学んだ。
藤井教授は発表直後、大学職員からの電話で吉報にふれた。受話器を置くと、たった一人の研究室で「おめでとう、やったね!」と思わず叫んだという。
教授によると、学生時代の井戸川さんは静かに思索にふけるタイプではなく、活動的でゼミの盛り上げ役だったという。
学内で開いたクリスマス会では米人気歌手マライア・キャリーさんの歌を一人で熱唱。「明るい笑顔でどこにでも自転車で出没し、お酒にも強かった。誰にもなびかず、はきはき考えを話す人。エネルギーの塊でした」
一方で自らの死生観については深い考えを持ち、深刻な悩みを抱えた友人を陰で支え、励ます一面もあった。新聞のコラムを愛読し、藤井教授は「ゼミで発する言葉の一つ一つも、考え抜かれていた」と話す。
死生学は「死」を通して「生」を見つめる学問。ゼミでは脳死や中絶、安楽死、死刑、出生前診断などの重いテーマを扱い、ゼミ生たちは時に涙を流して語り合う。井戸川さんは卒業時に「価値観を揺さぶられた」と話していたという。
卒業後は夢だった高校の国語教師になり、教壇に立ちながら執筆に励んできた。数年おきに開かれるゼミの同窓会には必ず出席し、卒業した教え子の寄せ書きを見せて「この言葉がうれしい」と語ることもあった。藤井教授は「生徒一人一人と関わることに喜びを見いだしてるのが伝わってきた。社会に出て、人間や命と正面から向き合ってきたことが、作品を高めたのだと思う」と活躍を喜んだ。
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