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姫路市社会福祉協議会が設けていたコロナ特例貸付の特設窓口。連日多くの申請者が訪れていた=2020年5月、姫路市安田3
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姫路市社会福祉協議会が設けていたコロナ特例貸付の特設窓口。連日多くの申請者が訪れていた=2020年5月、姫路市安田3

 国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認されてから3年。コロナ禍で減収した世帯を対象としたコロナ特例貸付の返済が始まる。全国的に過去に例がないほど多くの人がこの3年間、借金でしのいで生活してきた。兵庫県内で約4割が免除となる半面、残る6割の対象者は返済していかなければならない。収入がコロナ以前に戻らず、さらに厳しい生活となる人も多いとみられ、貸付が基本となった国の支援のあり方に疑問の声も上がる。

■当初から「返済免除」強調、申請相次ぐ

 コロナ特例貸付が始まる前、困窮者への支援を国会で問われた当時の安倍晋三首相はこんな答弁をした。

 「返済免除要件付きの個人向け緊急小口資金の特例を創設し、生活立て直しを支援いたします」(2020年3月11日)

 「厳しい状況が続けば償還が免除されるわけでございまして、そういうことについてももっと広報していきたい」(同年3月23日)

 当初から「返済免除」が強調され、20年3月25日に受け付けが始まると、一斉休校で働けず減収に苦しんだ人らの申請が相次いだ。

 その後も流行の波ごとに営業自粛や外出自粛が求められ、コロナの影響は長引いた。特例貸付もそのたびに10回の延長、追加の貸付が重ねられ、多い人で200万円の借金を背負った。そして、県内で約4割の返済が免除された。

■困窮「コロナが問題?」生活保護は横ばい

 阪神・淡路大震災以降、生活困窮者の支援活動を続けてきた「神戸の冬を支える会」事務局長の青木茂幸さんは、免除が4割に上ることについて「生活が苦しい状況なのは、本当にコロナの影響なのか」と疑問を投げかける。

 08年のリーマン・ショック時は「派遣切り」などが問題になり、多くの非正規労働者が職を失った。その影響はすぐに生活保護に表れ、兵庫県内でも受給世帯は一気に増えた。

 コロナ禍では、非正規労働者だけでなく、飲食や観光業から高齢者までさまざまな影響が出ているにもかかわらず、20年以降の生活保護の受給世帯数は横ばいが続く=グラフ

 青木さんは「貸付があったから、本来は増えていたはずの生活保護が横ばいになっている。返済が始まるこれからが大変だ」とし、「これだけ多くの人がすぐに借金に頼らざるを得なかった状況がある。国はコロナのせいにしているが、背景にはコロナ禍以前からの雇用のあり方、最低賃金などに問題があったのではないか」と指摘する。

■返済「10年では終わらない」

 コロナ特例貸付の返済期限は長くて10年。25年から返済が始まる分も含めて34年末には終わる予定だが、県社協の担当者は「10年では終わらない」と見通しを語る。

 阪神・淡路では「震災特例貸付」で約103億円、災害弔慰金法に基づく「災害援護資金」で約1309億円が貸し付けられたが、28年がたった今も震災特例貸付は約4700件、約7億5600万円が未返済のまま。災害援護資金は未返済が多い中で国が免除要件を拡大したものの、まだ約6億3700万円が未返済で、兵庫県などは解決のために免除する方針だ。

 コロナ特例貸付でも免除にならないまま返済もできず、数十年にわたって借金を背負い続ける人が出かねない。県社協の担当者は「災害と違うのは、政府が国民に行動制限を求めたことだ。そこへの補償は貸付ではないはず」と指摘。「今後、返済が始まる人への支援はもちろん、免除になった人も生活が苦しく支援が必要だ。一人でも多くの人が生活を再建できる環境づくりに目を向けてほしい」と訴えた。

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