神戸連続児童殺傷事件をはじめ、重大少年事件の記録が各地で廃棄されていた問題で、保存の在り方を検証している最高裁の有識者委員会(座長・梶木寿元広島高検検事長)は23日、第4回会合を開き、専門家の意見聴取を始めた。報道関係の有識者として、元朝日新聞記者の奥山俊宏・上智大教授が、事件記録を「国民共有の知的資源」と捉え、保存する理念を規則などに記すよう求めた。
奥山教授は記者時代、事件記録を基にした多くの調査報道の経験があり、2019年には、重要な民事裁判記録の大量廃棄を明らかにした。最高裁によると、意見聴取は非公開で約1時間だった。
関係者や聴取後に最高裁が示した資料によると、奥山教授は、過去に自身が取材、執筆した震災関連訴訟の記事などを紹介。事件記録は学ぶべき教訓が詰まっており、事件当事者と裁判所のためだけの存在ではないと指摘したという。
また、奥山教授は昨年秋以降、各地で廃棄が判明した少年事件記録は一般に公開はされないが、廃棄によって将来活用する可能性を断ち切ってはならない、とも強調。現在は裁判記録などの司法文書が対象となっていない公文書管理法に記された記録保存の理念規定を、裁判所の規則や運用通達に採り入れるよう求めた。
最高裁は有識者委で事件記録の永久保存の在り方などを検討中だが、聴取後の記者への説明では「(規則には)理念規定の記述はない。今後の議論によるが、理念の部分は検討の対象外ではない」と述べた。
一方、最高裁によると、有識者委のメンバーは今月19日、東京地裁・家裁で事件記録が保管される記録庫を視察した。通常保存や永久保存の文書が棚に並ぶ現場を確認した後、職員らと質疑応答したという。
最高裁有識者委は2月14日の次回会合でも、意見聴取を予定。少年事件被害者の立場として、全記録の廃棄が分かった神戸連続児童殺傷事件の遺族土師守さん(66)から心情などを聞き、民事事件や少年事件の代理人の視点で、日弁連が推薦した弁護士2人も意見を述べる。
最高裁は重大少年事件や民事裁判の記録約100件について、廃棄や保存の経緯などを調査中で、4月をめどに結果をまとめ公表するとしている。(霍見真一郎)
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