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週5日、事務などの仕事に励んでいる児童養護施設出身の女性=明石市魚住町錦が丘4
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週5日、事務などの仕事に励んでいる児童養護施設出身の女性=明石市魚住町錦が丘4

 虐待や貧困、親の不在を理由に、児童養護施設などで育った後、原則18歳(最長22歳)までに社会的な保護から離れる若者たち。彼ら、彼女らは「ケアリーバー」と呼ばれ、親などに頼れず孤立し、経済的に困窮しやすいとされる。兵庫県は当事者の実態調査に乗り出す方針だが、県内の2人のケースから、自立のために必要な支援を考えたい。

 施設や里親家庭などで生活する子どもは全国で4万人以上。県内には約2千人で、毎年50人ほど(神戸市を除く)が新たにケアリーバーとなるという。

 ただ、県内の施設関係者は「仕事をすぐにやめてしまったり、悩みを1人で抱えてふさぎこんだり、金銭管理が苦手で散財してしまうこともある」と課題を話す。県は2023年度、過去5年間に施設を退所した約250人に就労や進学、家計状況などを聞く。

◆「実家」ができた

 阪神地域で1人暮らしをする保育士の女性(25)は、生まれてすぐに乳児院で育てられた。母親は入院のため育児が困難で、父親は不在だった。18歳まで児童養護施設で過ごし、「施設が当たり前で、家族が分からなかった」と振り返る。

 退所が近づいた頃、それまで年末年始や夏休みに交流していた季節里親から、一緒に暮らしませんかと提案があった。女性は大学生の3年間を里親宅で過ごすことになった。

 食事の後、リビングでくつろぎながら、その日の出来事を話す。帰宅が遅いと、「心配したよ」と怒られる。それらの日常が新鮮で、温かかった。週1回は食事作りを担当し、自立のための準備もできた。

 里親から巣立ち、保育士として忙しく働く今も、悩んだり、困ったりしたときは里親に連絡する。「実家な感じ。相談できる人がいて満たされている。家族が経験できたことも、自分にとって大きいと思う」

◆職親

 仕事を通じてケアリーバーを見守る「職親」という取り組みも、一昨年から県内で始まっている。

 明石市魚住町錦が丘4の人材派遣会社「メタルテック」で事務の仕事を担う女性(21)は、4歳から児童養護施設で暮らしてきた。

 18歳で退所後、大阪の専門学校に通うために1人暮らしをしたが、学校になじめず、「居場所がなかった」。誰にも相談できない不安な気持ちを遊ぶことで紛らわし、自立のためのお金は消えていった。

 学校を中退した彼女に手を差し伸べたのが、メタルテック社長の松下真由実さん(62)だった。松下さんは、児童養護施設のボランティアに取り組む経営者仲間からケアリーバーの窮状を聞き、職親と名付けた活動を始めた。

 21年夏から働く女性は当初、「『施設で育ったから』って言い訳みたいに思ってた」。無断欠勤や遅刻のたび、松下さんに叱られた。ある時、「私、おってもいいんですか?」と女性が聞いた。松下さんはすぐに答えた。「おっていいよ」

 女性の勤務態度は徐々に改まり、アルバイトから契約社員になり、今年は秘書検定にチャレンジする。「頼れる人がいて、安心感がある。『どうでもいい』って思ってた前の自分より、今は楽しい」

 松下さんは現在、18歳の男性にも職親として関わる。金銭管理や生活の助言もし、「サポートさえあれば自立できる」と話す。

     ◇

 24年施行の改正児童福祉法では、施設などで暮らす年齢上限が撤廃されるが、就職や進学に合わせて退所を選ぶケースも少なくなく、支援は欠かせない。県は実態調査や相談室の設置などの費用として約4千万円を23年度当初予算案に盛り込んでいる。

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