里山に春を告げるカエル「ニホンアカガエル」が、各地で産卵の季節を迎えている。雨が降った今月10日の夜から11日の未明にかけ、兵庫県三木市の山野を流れるせせらぎで観察した。闇夜に雄がかわいい鳴き声を響かせ、成立したペアが産卵を開始。そして、事が終わると雄は無情にも…。
ニホンアカガエルは日本の固有種で本州、四国、九州に分布している。兵庫県版レッドリスト2017では「存続基盤がぜい弱」なCランクに分類されている。
訪ねた三木市の水辺では今季、1月下旬に最初の卵塊が見つかり、この日までに40個以上が確認されていた。夕方まで降った雨が上がり、うっすら霧がかかった闇の中、懐中電灯を手にカエルを探した。
午後8時、深さ数センチの水の中に、雄は多く見つかるものの雌はほとんどいない。30分ほど待って再び探すと、だいだい色の背中をした雌がちらほら、姿を見せ始めた。お腹が大きく、でっぷりとしている。
同9時、霧が濃くなり、小さく「キョ、キョ、キョ、キョ」と鳴く雄の声が聞こえだすと、雌の背中に雄がしがみついたペアが成立し始めた。雌の産卵と同時に雄が放精する「抱接」の体勢だ。しばらく2組の様子を見ることにした。
同10時、2組にはほとんど動きがない。本当に産卵するのか。しびれを切らして周囲を見て回ると、しわしわにやせ細った1匹の雌を見つけた。「やられた」。広げた後ろ脚の間には、キャビアに似た小さな黒い粒の集合体。産まれたばかりの卵塊だ。観察していた2組より後に成立したペアが、先に産卵を終えたらしい。狙いを定めたら、辛抱強く待つしかない。
同10時50分過ぎ、2組の一方がもぞもぞと動き始めた。右へ左へ向きを変え、落ち着かない。上に乗った雄が、外向きにたたんでいた後ろ脚を下向きに変える。直後、雌が産卵を始めた。「いち、に。いち、に」というリズムで、絞り出すように黒い粒々を放出していく。1分ほどで、みるみるうちに雌のお腹はぺったんこになり、産卵が終わった。
と思うや否や、雄は、しがみついていた前脚をほどき、さっさと泳ぎ去ってしまった。一方、大仕事を終えた雌は、その場でじっと動かない。数分間見守っていると、ゆっくりと動きだし、暗闇の中に消えていった。
残された卵は2週間ほどでふ化し、無数の命が誕生する。産卵は3月上旬ごろまで続く。
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