ウクライナでの戦闘が長引けば、ロシアは核兵器を使うのではないか-。この1年、世界中を覆った不安感に対し、「現時点で、核兵器が使われる可能性は低い」と指摘する日本の専門家がいる。ウクライナ研究会会長で、ロシアの内情にも詳しい神戸学院大の岡部芳彦教授だ。分析の背景にあるのが、表面的な戦局の動向ではなく、ロシアに根付く「兵士は消耗品」という考え方。その真意や今後の見通しなどを詳しく聞いた。
-まずは、誰もが気になっている質問から。単刀直入に、いつごろ戦闘が終息すると考えていますか。
「最も考えたくない状況なのですが、『エンドレス』になるのでは、と思っています。ウクライナ側の抵抗によってロシア側が一気に攻め込めない一方で、国力に差があるため、ウクライナ側が押し返すまでには至らない。2014年にロシアに支援された勢力が占領したウクライナ東部2州の一部のように、その後も戦闘状態が継続する可能性がぬぐいきれません」
-ウクライナ側は、終息の時期をどう見据えているのでしょうか。
「昨秋に来日したウクライナ最高会議(議会)議員団は、当時、『2023年の春には戦闘が終わる』と話していました。これは、彼らの単なる願望でなく、ウクライナ国内で広がっていた情報なんです。ところが、この2月下旬の段階でも、そんな兆しすらありませんよね」
「私がウクライナの議員に聞いたり、閣僚らの発言を確認したりする限りでは、現時点で、最も長期化するという見通しでも『2023年末(には戦闘が終わる)』なんです。あまり根拠はありません。ただ、西側諸国への支援要求は、こういった短期的な見通しに基づいています。いつまでにこの地域を奪回するので、これだけの兵器が必要-といった具合です」
-ウクライナ国民からすれば、終息の時期が、先へ先へと引き延ばされることになります。
「国民の戦意は相変わらず高く、厭戦(えんせん)ムードが広がっているわけではありません。ただ、失望感や疲労感が、相当高まってきているように感じます。近くまで来ていると思っていたゴールが、遠ざかっていくわけですからね」
-一方のロシア国民は、戦闘の長期化をどう捉えているのでしょう。
「一般的には、厳しい情報統制によって、軍事侵攻に反対しようにも声を上げられない-と思われがちですよね。これはこれで正しいのですが、一面的な視点です。ロシア国民の中には、根っこの部分で侵攻に賛成している人がそれなりにいるんですよ」
-それは、なぜですか。
「侵攻の大義名分として、プーチン大統領が強調している『ナチズムとの戦い』がキーワードです。他国の領土へ軍隊を送るためには、国際的に何らかの理由づけが必要だったのは間違いありません。ただ、ナチズムという言葉は、国内の世論に訴えかけるためにも絶対に欠かせないものだったのです」
「第2次世界大戦で、旧ソ連は民間人も含めて2千万人以上の人が亡くなったと言われています。これは世界各国の中で最も多い数です。国名がロシアに変わった今も、ナチスドイツと戦った歴史を輝かしいものとして刷り込まれている国民は多く、ましてや批判なんて許されない雰囲気が色濃いのです。逆に言えば、ナチズムとの戦いを掲げれば、国民の多くは反対しようがない」
-1991年に旧ソ連から独立したウクライナは、民主主義国家であり、ナチズムのイメージと結びつかないのですが。
「ロシア側は、第2次大戦中にウクライナの独立を目指す勢力が、一時期ナチスドイツと協力した事実を捉まえて、『現在のウクライナもナチズムが支配している』と主張しています」
-確かに、ロシア側はウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」とさかんに攻撃していますね。
「ロシア側からすれば、もっと端的に、ゼレンスキー大統領を『現代のヒトラー』と言いたいはずです。ただ、ゼレンスキー大統領は、ユダヤ系なんです。ヒトラーが迫害した側なので、表現したくてもできないわけです。もっとも、ロシアの外務大臣が『ヒトラーにもユダヤ人の血が入っていた』と発言して問題になったことがありましたが」
-過去の歴史が、現代の政治と密接に関わっているわけですね。
「政治と歴史が、一体化しているといってもいいでしょう。象徴的な出来事が、この2月にもありました。第2次大戦であったレニングラード包囲戦の80周年式典です。ロシアではこれまで、ドイツの攻めを防ぎきった戦闘終結の1944年を節目と位置付け、70周年のセレモニーも2014年に開催しています」
「本来ならば、80周年は来年のはずなのですが、プーチン大統領は、『ドイツの包囲を破り始めたのは1943年』と定義を変えて1年前倒ししました。苦戦が続く中で、第2次大戦の記憶を改めて呼び起こし、戦意の高揚につなげる狙いがあったと考えて間違いないでしょう。第2次大戦の戦死者と、今回の軍事侵攻の戦死者を並べたレリーフを造るなど、このような事例はいくらでもあります」
-ただ、いくら「ナチズムとの戦い」を掲げているとしても、戦闘の長期化に伴ってロシア軍の犠牲者が増え続けています。国民感情が、反戦に傾いてもおかしくなさそうですが。
「それは、その通りです。憎きナチズムとの戦いとはいえ、戦死者の家族が悲しまないはずはありません。ただ、これもロシアという国の特徴の一つなのですが、兵士の命がとにかく軽いのです。今に始まったことではなく、19世紀のクリミア戦争の頃から根付いている“常識”といってもいいでしょう。『兵士は畑でとれる』ということわざがあるくらいです」
-戦死者が増えれば増えるほど、悲しむ家族も増えます。“常識”が間違っていたと考え直す動きが広がっていく可能性はないのですか。
「モスクワなど大都市に家族がいる部隊の被害が増えれば、そういう可能性もあるでしょうね。ただ、実際は違います。侵攻直後、最前線に投入されたのは、ブリヤート人やヤクート人といった、少数民族の部隊が多かった。彼らが戦死しても、世論は動かないどころか、人ごとのように感じていたかもしれません」
「兵力の確保を民間軍事会社に頼ったり、囚人から志願兵を募ったりしているのも、同じ理由です。彼らがいくら戦死しても、反戦の動きにはつながらないとの思惑からでしょう」
-仮に世論をコントロールできたとしても、ロシアからすれば、戦闘の長期化は想定外だったはずです。決着をつけるために核兵器を使用する、という考えたくない事態はあり得るのでしょうか。
「現時点では、ロシアが核兵器を使う可能性は低いと思っています。核兵器の最大の利点は、自国民に犠牲を出さず、敵国に大きな被害を与えることにあります。言い換えれば、自国民の被害を抑えるという発想が根底にあるわけです」
「ロシアは、違います。繰り返しになりますが、『兵士は消耗品』という考え方が“常識”なのです。被害を抑えるという発想がそもそもない。どんな形であれ、兵士を補充し続けられる限りは、核兵器に手を出すことはない、というのが私の見立てです」
-侵攻が始まってから1年になりますが、日本国内ではいまだに「米国など西側諸国によるウクライナ寄りの情報ばかりが流れている」との指摘があります。
「それは誤解ですね。ロシア側も、自分たちの正当性をアピールするために積極的に情報を流しており、ネットで調べれば、記事にしても動画にしても、ロシア側の発信がいくらでも見つかります」
「例えば、ロシア国営通信社の『タス通信』の記事に翻訳機能を使えば、おおよその趣旨はつかめるでしょう。『チャンネル1』という国営テレビのニュース映像を見るだけでも、ロシア側の主張がある程度、理解できると思います。『情報が偏っている』と感じている人は、自分から積極的に取りにいくことをお勧めします」
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