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満面の笑みを浮かべてはしゃぐ長男レブちゃん(左)とオルガ・クトバさん。侵攻から1年、避難生活はいつまで続くのか=神戸市内
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満面の笑みを浮かべてはしゃぐ長男レブちゃん(左)とオルガ・クトバさん。侵攻から1年、避難生活はいつまで続くのか=神戸市内
軍事侵攻前の家族写真。レブちゃんが誕生し、喜ぶオルガ・クトバさん(左)と夫=2020年8月(クトバさん提供)
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軍事侵攻前の家族写真。レブちゃんが誕生し、喜ぶオルガ・クトバさん(左)と夫=2020年8月(クトバさん提供)

 侵攻から1年もたてば、ウクライナに戻れると信じていた。だが、ロシアとの戦闘が終わる気配はない。幼子を抱えた日本での避難生活が、いつまで続くのか。十分すぎる周囲のサポートに、不満は一切ない。日本が、もっともっと好きになった。それでも募る、祖国への思い。「私は、強くなったと思う。望んでいたわけではないけれど」。笑顔で、努めて前を向く。

 寝室の床に、何セットものジグソーパズルが雑然と並んでいる。その中の一つ、キリンの図柄を、オルガ・クトバさん(40)が手に取った。長男レブちゃん(2)が組み立てたものだ。

懸命にかき集めてもまだ「穴だらけ」

 完成していたパズルを崩し、クトバさんがため息をつく。「1年前まできれいに整っていたのが、バラバラになって、ピースを一生懸命かき集めて、でもまだ穴だらけ」。これが、今の心境であり、祖国の現状とも重なるという。

 昨年4月末、首都キーウに夫を残し、知人のつてで神戸に逃れてきた。学生時代に趣味で日本語を学び、茶の湯に親しむなど、もともと大の日本好き。憧れと、安全な環境が来日の決め手だった。

 行政も、民間のボランティアも、親身になって寄り添ってくれた。レブちゃんを預ける保育施設が決まり、公営住宅の一室に住まいを確保。手厚い支援を忘れないように、書道体験でつづった「感謝」の2文字をリビングの壁に貼った。

 体調を崩しがちなレブちゃんが心配で、働けてはいない。貯金を取り崩しながらの生活に不安もあったが、「次の春にはウクライナに戻れる。全てが解決する」。そんな漠然とした願いを信じ、支えにした。

 年が変わった。戦闘は続き、収束が見通せない。

 毎晩、欠かさず続ける通話アプリでの夫との会話。暗い雰囲気が、日に日に増していく。「もう大丈夫」と思ったら、また空襲警報が鳴り響く-。その繰り返しに、夫の疲労も限界に達しているように感じる。

 「もちろん、ウクライナには勝ってほしい。でも、若者がたくさん亡くなった。勝ったとしても代償がある。ジグソーパズルがどうやったら元通りになるのか、私には分からない」

「日本に戻りたい」と笑い合える日は

 頭を抱え、首をかしげながら、それでも肯定的にこの1年を振り返るクトバさん。その横で、レブちゃんが走り回っている。

 体は強くないが、とにかく活発で、成長も順調だ。室内に流れるクラシック音楽を聴いて「ショパン」と当てる。来客があれば、玄関に駆けていって「どうぞ、どうぞ」と迎え入れ、客が帰る時には靴を抱えて手渡してあげる。

 子どものためには、両親がそろっていることが必要だとクトバさんは信じていた。それがかなわない現状でも、すくすくと育ち、屈託のない笑顔を振りまくレブちゃんに目を細める。

 「この春は無理だけど、夏にはきっと、ウクライナに帰れるんじゃないかな。別人のように強くなった私と、大きくなった息子に、家族も驚くはずよ。それでね、私が『日本は良かった、戻りたい』って言って、みんなで笑い合うのよ」

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