2011年3月の東日本大震災で甚大な津波被害を受け、1040人の死者・行方不明者が出た岩手県釜石市。「市民を助けられなかった」。当時、市の防災課長だった佐々木守さん(68)は、後悔に押しつぶされそうになりながら生きてきた。「想定外」と言ってはいけない。二度と同じことを起こさせない。全国で語り部活動を続け、今年の1月17日は神戸を訪れ、阪神・淡路大震災の犠牲者を悼んだ。
12年前の3月11日、午後2時46分。佐々木さんは、海岸から約400メートル離れた釜石市役所第1庁舎にいた。市議会本会議の最中だった。突然の激震。ゆらゆらと揺れが収まらない。「これは絶対に津波が来る」と直感した。
すぐに部下に防災行政無線での避難呼びかけを指示した。「津波が来るので高台に避難してください」。街中に設置されたスピーカーから繰り返し音声が流れ、小高い丘にたつ庁舎には次々と市民が避難してきた。職員や議員を合わせて200~300人ほどを、どんどん上の階へ誘導した。
庁舎2階から外を見ると、内陸に向かい渋滞する車の列が目に入った。海からは壁のような津波が迫る。声を上げる間もなく、車に乗った人たちは流されていった。何もできなかった。
庁舎にも波が押し寄せ、皆が屋上に避難。見下ろす街は全て水にのまれていた。「まるで湖のようだった。現実なのか、信じられなかった」と振り返る。
水が引いても、庁舎は周りをがれきに囲まれて3日間出られなかった。窓から見える街に人影は見えず、ほとんどの建物は壊れていた。「この街は全滅したんじゃないだろうか」。暖房もトイレも使えない。十分な食べ物もなかったが、避難者らの対応に当たった。
佐々木さんは市の本部機能を移したJR釜石駅近くの物産センターでも、半年以上寝泊まりして働いたが、記憶はほとんどないという。
「あれほどの津波が来るとは思わず、市民が逃げなかった。行政の責任だ」。震災後、ずっと抱えてきた思いだ。「『想定外』という言葉を、行政は使っちゃいけない。亡くなった人たちに失礼になる」とかみしめるように話す。
今年の1月17日早朝、佐々木さんは神戸・三宮の東遊園地にいた。慰霊と、東日本大震災で支えてくれた神戸の人たちへの感謝を胸に初めて訪れた。若い人たちが竹灯籠に火をともす姿を見て、「東北でも次の世代に積極的に伝えていくことが重要」と感じた。
阪神・淡路大震災では、釜石市役所で被災地への義援金やボランティア派遣を担当した。「大変なこと」と思いながらも、どこか人ごとだった。自分が被災者になってやっと気付いた。
いまだに津波の映像を見られない。思い出しては体が震える。「本当は人前で話をする資格なんてない」と言いながらも、語り部を引き受けてきた。「もし自分が生きている意味があるとしたら、二度と同じことが起きないように伝えるため」。近い将来、南海トラフ巨大地震の発生も懸念されている。命を守り抜くため、語り続けていく。
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