1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、重大少年事件の記録が各地で廃棄されていた問題で、最高裁は記録が廃棄されたり永久保存されたりした経緯を調べている。調査対象となった少年事件は全国59件で、民事裁判も含めると約100事件に上る。4月をめどに再発防止策とともに、調査結果が公表される見通しだ。被害者遺族らは調査結果や、有識者委員会(座長・梶木寿(ひさし)元広島高検検事長)が打ち出す記録保存制度と運用の見直しを注視している。
京都府亀岡市で2012年、無免許の元少年=当時(18)=が居眠り運転で集団登校中の児童らをはねた暴走事故では、児童や妊婦、胎児の計4人が命を奪われ、7人が重軽傷を負った。遺族らはより厳しい罪名の適用を求めたが、かなえられなかった。しかしその署名活動は共感を呼び、罰則を強化した法が成立した。「なぜそんな記録を廃棄できるのか理解できない」。妊婦だった松村幸姫(ゆきひ)さんを亡くした父、中江美則(よしのり)さん(59)は語る。
一般的な少年事件の記録は、少年が26歳になるまでの保存を規定しているが、史料的価値の高い記録は永久保存するよう定められている。京都家裁によると、事故に関わったとされた6人の少年のうち、検察官送致(逆送)され、有罪判決を受けた3人の生い立ちなどを記した調査記録は19年2月に廃棄された。また、家裁で保護処分を受けた残り3人の全事件記録が21年3月までに廃棄されていた。いずれも事故から10年足らずで記録は失われた。中江さんは、家裁から謝罪はもちろん、廃棄の事実を告げる連絡さえないと憤る。
加害少年から謝罪が一切ないというが、中江さんは二度と痛ましい事故が起こらないように、講演を引き受けてきた。そんな中で知った記録廃棄にがくぜんとした。
「すがる思いで、娘の命を奪った残酷な記録を裁判所に託した。僕らの事件は、法律を変えることにつながったが、重大事件と思われていなかったのか」。中江さんは最高裁に対し、調査対象事件ごとに被害者遺族に経緯を説明してほしいと訴える。いまだに家裁から連絡がないのは、神戸連続児童殺傷事件の遺族のように抗議していないからか、と思い悩む。
「血の出るような思いで作られた記録をごみにしてしまう。裁判所は、なぜ廃棄をしたらだめだと姿勢を問われるのか、いま一度考え直してほしい」(霍見真一郎)
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