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高台から見えた1号機(奥)=福島県(代表撮影)
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高台から見えた1号機(奥)=福島県(代表撮影)
高台から見えた1号機(奥)=福島県(代表撮影)
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高台から見えた1号機(奥)=福島県(代表撮影)
毎日たまり続ける処理水を入れた巨大タンク群=福島県(代表撮影)
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毎日たまり続ける処理水を入れた巨大タンク群=福島県(代表撮影)
処理水を混ぜた海水で飼育されているヒラメなど=福島県(代表撮影)
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処理水を混ぜた海水で飼育されているヒラメなど=福島県(代表撮影)
処理水を海洋放出するための工事=福島県(代表撮影)
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処理水を海洋放出するための工事=福島県(代表撮影)

 東日本大震災による東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の事故からまもなく12年。史上最悪レベルの原子力事故を経験しながら、政府はウクライナ危機などによるエネルギー不足を理由に原発回帰に政策を転換した。今夏までには処理水の海洋放出を目指すが、風評被害を恐れる地元漁業者らの反発は根強い。「この12年の努力が無駄になるのでは」。日本記者クラブ取材団に参加し、現地の声を聞いた。

 ■デブリ取り出し「耳かき1杯分」から

 まず、1~4号機が見渡せる高台へ向かう。約100メートル先に見えたのは、水素爆発で建屋の上部が吹き飛んだ1号機。さびた鉄骨はむき出しの無残な姿をさらし、爆発の威力を物語る。

 廃炉に向け東電が最難関とするのが、事故で原子炉に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しだ。少量でも高線量のため、ロボットによる内部調査をした。

 1号機は2027年度の取り出しに向け、建屋全体を覆う大型カバーを製作中。23年度内に設置する予定だ。2号機は建屋を解体せずに取り出すため、23年度後半にも取り出しの試験作業が始まる。

 高い線量や新型コロナウイルス禍に作業を阻まれ、目標の21年から遅れた。「耳かき1杯分ほど」(東電)の数グラムから始めるが、デブリの総量は約880トンとの推計も。内部に機器を入れるのに約10年かかった。政府は事故から廃炉完了までを30~40年と見込むが、道のりは遠い。

 ■東電、処理水でヒラメやアワビを飼育

 海の手前には灰色の「タンクの森」が広がっていた。千基を超える巨大タンク(高さ10メートル、直径10メートル、容量千トン)の処理水はもう一つの課題だ。高濃度の放射性物質を含む汚染水を「ALPS(多核種除去設備)」で処理した後の水をいう。核燃料の冷却水や、建屋に流れ込む地下水が放射性物質に触れて汚染水となり、処理水も1日平均100トンはたまる。

 水は既に約132万トンに達し、あと5万トンしか空きがない。「今秋には計画容量に達する」と東電担当者。「満タンになれば処理ができなくなる」などの理由で政府は海洋放出を決めた。

 海沿いのエリアでは海洋放出の工事が始まっていた。処理水をためる水槽が掘られ、その横から海底の岩盤を貫くトンネル(約1キロ)が途中までできている。

 ただ、処理水には放射性物質トリチウム(三重水素)が残る。人体への影響は少ないとされ、東電も放出時のトリチウム濃度は国基準の40分の1未満-と説明するが、地元関係者らは風評被害を懸念する。

 昨秋、東電は対策として、処理水でヒラメ800匹やアワビの飼育を始めた。海水と、処理水を混ぜた海水に分けて、成育状況やトリチウム濃度を比較。担当者は「数値が安全性を示しても、安心をどう説明していくかだ」と語った。

 ■漁業者「これまでの努力が無駄に」

 事故で全町避難となった浪江町も訪れた。「やっと地元の漁業が立ち直ってきたのに、これまでの努力が無駄になるのでは」。処理水の海洋放出を前に、同町の水産加工会社「柴栄」の柴強社長(56)は不安を隠せない。

 被災から9年後の20年に事業を再開させ、ようやく軌道に乗ってきた。「同じ魚を同じ値段で売った時、この先も消費者が福島産を選んでくれるのか」と表情を曇らせた。

 一方で廃炉作業を支えるのも地元民だ。原発で働く1日約4500人のうち、約7割を福島県民が占める。この日、取材団を案内した東電の松尾桂介・廃炉コミュニケーションセンター副所長(51)も同町出身。入社後も大半は福島に勤務し、事故後も東電の広報として現地でメディア対応に当たった。

 「地元にご理解いただけるよう進めるしかない」と、何度も口にしていたのが印象的だった。

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