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ウクライナ政府が各地に設け、暖房や充電器、インターネット回線などがあるシェルター「不撓不屈拠点」のサイト
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ウクライナ政府が各地に設け、暖房や充電器、インターネット回線などがあるシェルター「不撓不屈拠点」のサイト
ロシアやウクライナで一般的なSNS「テレグラム」では、ウクライナのゼレンスキー大統領の公式アカウントが連日、演説動画をアップしている
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ロシアやウクライナで一般的なSNS「テレグラム」では、ウクライナのゼレンスキー大統領の公式アカウントが連日、演説動画をアップしている
さまざまなアカウントで戦闘などの動画を公開されているSNS「テレグラム」の画面=丹波市春日町朝日
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さまざまなアカウントで戦闘などの動画を公開されているSNS「テレグラム」の画面=丹波市春日町朝日

 ロシアによるウクライナ侵攻が続く今も、インターネット上では両国の政府や各種メディア、人々のSNS(交流サイト)などから、さまざまな情報が発信されている。両国に精通する通訳者の知識と手を借り、ニュースでは伝えられないウクライナでの暮らしの実態をネットから探った。

■合言葉は「不撓不屈」

 協力してくれたのは、「スラブ世界研究所」(東京)主任研究員の河津雅人さん(36)=兵庫県丹波市。ロシア語、ウクライナ語の通訳として、日本メディアの取材コーディネートやファクトチェックの手助け、ウクライナからの避難者の支援などを手がける。日本文化をロシアやウクライナに発信するユーチューバーでもある。

 「旧ソ連時代を知らない若い世代ほどロシアへの反感が強い。ウクライナにいるウクライナ人の友人たちは『不撓不屈』を合言葉に、侵攻後の生活を送っています。できるだけ日常の生活を送り続けることが、市民にとって抵抗の意思表示となっているようです」。河津さんはこう語る。

 ロシア軍によるインフラへの攻撃で、地域によっては電気や水道などライフラインの寸断が起きることも。そんな中で住民生活を支援するのが、政府によって4千カ所余りに設けられた「不撓不屈拠点」と呼ばれるシェルターだ。「不屈センター」などとも訳される。テントなどで設営され、水や医薬品、暖房、日用品、インターネット回線、発電機、モバイルバッテリーなどが用意されている。

 政府のウェブサイトには、拠点の位置や利用可能な設備を落とし込んだ地図がアップされている。ウクライナ全土に設営を示すポイントが表示される一方、ロシア軍や親ロシア派が支配する東部のエリアなどは空白地になっている。

■より困難な親ロシア地域の暮らし

 不撓不屈拠点の空白地の住人は、より危険な生活を強いられている。

 河津さんが「東部の親ロシア派の支配地域に住んでいるウクライナ人の知人は『アパートの近くにウクライナ側から砲弾が落ちたことがある』と言っていました」と教えてくれた。

 行政の機能不全や物資不足は、ウクライナの他の地域やロシア国内よりもひどい状況で、「知人からは『隠れるように生きている』と聞いています」。ウクライナの安全な地域へ避難するには、支配地域とウクライナの「国境」を抜けるか、一度ロシアに入って第三国経由でウクライナに戻るか。いずれにせよ命の危険を伴う。

■大統領がSNSで日々演説

 ウクライナ侵攻で、両国間の情報戦の主戦場になっているのがSNS。市民が撮影した戦場の様子からプロパガンダまで、真偽を問わず情報があふれているが、国民向けの政府公式情報もまた、SNSで日々発信される。

 その主なチャンネルが「テレグラム」だ。ロシアやウクライナでも、友達とのメッセージのやりとりや動画、写真の投稿などで広く使われている。ウクライナ政府や要人、自治体も公式アカウントを開設し、被害状況などの情報を発信。ゼレンスキー大統領は演説の動画を日々更新し、国民を鼓舞している。

 テレグラムは秘匿性の高さから、日本では特殊詐欺グループなどが連絡手段に悪用することで知られるが、ウクライナ侵攻では、戦場の様子を伝える情報が拡散されている。日本のメディアが引用する現地の映像もテレグラムから入手するものが多く、河津さんは日本の放送局が入手した映像のファクトチェックなどを手伝っている。

 秘匿性が高いと本音を語りやすいのか、河津さんが親ロシア派支配地域の知人に実情を聞いたのも、テレグラムを介してだった。

■地元メディアは連日の被害報道

 政府の公式発表や個人のSNS投稿以外で、情報発信に大きな役割を担っているのが、ウクライナの地元メディアだ。例えば、次のようなニュースが日夜報じられている。

 「非常事態庁の発表によると、○時○分に○○にミサイルが着弾し、電力網が損傷した。復旧には時間がかかりそうだ」「ミサイル攻撃により民間人○人が死亡し、○人が負傷した」

 河津さんによると、各メディアは、民間人やインフラの被害状況を刻々と報じ、計画停電の時間帯などの生活情報も細かく取り上げている。

 「ただし、ロシア側に情報が漏れることを防ぐために、詳細な軍事に関する事柄は地元メディアから出ることはほとんどありません」

 反対にロシア側からの情報はプロパガンダの可能性がある。戦況について、欧米や日本のメディアの多くは、米国の研究機関やイギリス国防省、オランダの軍事情報サイトなどが分析、公開している情報を頼りにしているという。

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