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ジェンダーギャップの解消に取り組む兵庫県豊岡市の本庁窓口。企業、地域、家庭への浸透に向けて模索が続く=同市中央町
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ジェンダーギャップの解消に取り組む兵庫県豊岡市の本庁窓口。企業、地域、家庭への浸透に向けて模索が続く=同市中央町
管理職の女性割合が都道府県でトップという鳥取県の平井伸治知事=同県庁
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管理職の女性割合が都道府県でトップという鳥取県の平井伸治知事=同県庁
執務室でパソコンに向かう鳥取県の池上祥子統轄監=同県庁
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執務室でパソコンに向かう鳥取県の池上祥子統轄監=同県庁
兵庫県豊岡市の小野地区コミュニティセンターでの出前講座の様子=同市出石町袴狭
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兵庫県豊岡市の小野地区コミュニティセンターでの出前講座の様子=同市出石町袴狭

■時代の流れとともに変化

 1995年、米国連邦選挙委員会。部長ポストの女性が、部下の男性と活発に議論を交わし、ときには仮装をして職場にやって来てみんなを楽しませていた。

 「霞が関では見たことがない光景だな」。鳥取県知事の平井伸治さん(61)は、自治省(現総務省)の職員として派遣された当時の経験を今も鮮明に覚えている。

 2007年の知事就任後、最初に取りかかったのが女性の登用だった。庁内では「女性が部長だと議会で答弁ができない」などと言われていた。男性職員からの恨み節も漏れ伝わってきたが、強い意志で人事権を行使した。

 「公務員の仕事は、政策形成と執行が仕事。世の中の半分が女性であれば投影させるべきだ」

 全部局をまとめる統轄監ポストも、4代続けて女性が就任。現任の池上祥子さん(58)は、育児休暇を取得しながら、十数回の異動を経て福祉や教育、文化振興などさまざまな業務を担ってきた。「段階を踏んで経験を積み重ねていけた」と振り返る。

 平井さんが知事に就いてから15年。管理職に占める女性の割合は22・7%と、都道府県平均を10ポイントも上回る。全国でナンバーワンという数値に象徴されるように、目に見える形で進む。

     ◆

 18年に始まった兵庫県豊岡市のジェンダーギャップ解消の取り組みも、鳥取県と同様、トップの決断がきっかけだった。ただ、庁内だけでなく、企業や地域コミュニティー、家庭へと浸透させ、一体的に進めるため、スタートは慎重だった。同市は「これまでの社会のありようや個人の生き方を否定するわけではない」と繰り返し説明した。

 ジェンダーギャップ対策室の名称も、設置した19年は「ワークイノベーション推進室」で、最初に手を付けたのは企業だった。性差にとらわれない人材登用が、働き手の確保や企業の成長につながることを説き、「損益」を強調した。

 けれど、企業の反応は意外にも「公平さ」への共感だった。東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森喜朗元首相の女性蔑視発言で、全国的にもジェンダー平等への機運は高まっていく。

 市が21年3月に策定した「ジェンダーギャップ解消戦略」は、地域コミュニティーや家庭へと対象を広げた。検討に加わったのは、子育て中の人や若手会社員、経営者らさまざまな立場の市民たち。一人の女性がこんな感想を述べた。

 「これまで原動力は、理不尽さへの『怒り』だったが、一緒に変えていけるという『期待』に変わってきた」

     ◆

 今年2月下旬、豊岡市の小野地区コミュニティセンター。この日も、住民向けの市の出前講座が開かれていた。参加者は約20人。「ジェンダー」という言葉を初めて耳にする人も多く、会場は静まり返る。地域活動への女性参加をテーマにしたワークショップが始まった。高齢の男性は首をかしげながら「カンガエタコトナシ」と走り書き。ある女性は「家事を倍以上しているから無理」とつぶやいた。

 それでも、時間がたつにつれ、ぽつりぽつりと率直な思いを打ち明け始める。自治会組織や企業でも、どこでもそうだった。ジェンダーギャップというと仰々しいが、そのハードルを下げて、身近な問題であることに気付いてさえもらえれば、みんな、何かしらの意見を口にしてくれる。

 講座の最後に、参加者がそれぞれ、5文字か7文字で今の感情を表現し、その言葉をランダムで組み合わせて「ジェンダー川柳」をつくった。

 「独り立ち 一挙両得 がんばるぞ」「まあええか 男と女 興味ない」「楽しいな 生活が疲弊 日本晴れ」-。

 あまりにもバラバラの感情に会場は笑いで包まれた。講座を企画した地区のスタッフは「まず足を運んでくれ、話をできたことが大きな一歩」とこれからに期待する。

 地域でも、企業でも、そして役所でも、目に見える大きな成果は、まだ出ていないかもしれない。ただ、「ジェンダーレンズ」を通して見えたことが、気付きとなり、時代の流れとともに少しずつ変わり始めている。

 あなたのジェンダーレンズには、何が映っていますか。

【メモ】豊岡市ジェンダーギャップ対策室の取り組みは、企業認定制度や出前講座、女性向けデジタル人材育成など49種類と多岐にわたる。各部署でも審議会の女性委員が半数以上になるように努めることや、各種データを男女別でみるなどを行っている。2023年度にはジェンダー平等を意識した独自の絵本を制作する予定だ。

【特集】都道府県版ジェンダー・ギャップ指数

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