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ポーズを決めるロシア出身のナタリア・トロフィモバさん(中央)、ウクライナ出身のオルガ・クリクンさん(右)、ビクトリア・スタルノバさん=姫路市本町
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ポーズを決めるロシア出身のナタリア・トロフィモバさん(中央)、ウクライナ出身のオルガ・クリクンさん(右)、ビクトリア・スタルノバさん=姫路市本町

 世界文化遺産・国宝姫路城(兵庫県姫路市本町)近くで開催中の「さくらサーカス」で、交戦を続けるロシアとウクライナ出身のアーティストが共演している。実家近くにヘリコプターが墜落した。徴兵された弟とは連絡が取れない…。戦火のやまない祖国と家族を思う毎日だが、サーカス内では互いに戦争の話は口にしない。前を向き、華やかなステージを一緒に作り上げる。

 ウクライナ出身のオルガ・クリクンさん(26)とビクトリア・スタルノバさん(31)、ロシア出身のナタリア・トロフィモバさん(40)。それぞれ20歳前後で祖国を離れて経験を積み、さくらサーカスに加わった。

 3人は他の団員とともに、サーカス会場の敷地内で共同生活を送る。互いの祖国が戦火を交えても同じステージに立つ仲間だ。オルガさんは「個人が戦いに加担しているわけじゃない。ナタリアと一緒に仕事ができるのは素晴らしいこと」と言い切る。

 戦争の影響はそれぞれの家族に及ぶ。オルガさんの両親や弟は首都キーウ(キエフ)近郊で暮らし、電気が自由に使えない。1月には実家近くにウクライナ軍のヘリコプターが墜落し、市民が犠牲となった。

 家族は身近に迫る命の危険に不安を募らせる。「自分はこのまま日本にいてもいいのか。でも、ウクライナに戻るのは怖い」。オルガさんの心は揺れる。

 ビクトリアさんの故郷のまちはロシアの攻撃を受けていないが、家族は薬が手に入りにくくなるなど健康も脅かされる。この1年を「多くの不安があり、たくさん涙を流した」と振り返る。

 ロシア出身のナタリアさんは、昨年11月に徴兵された弟と連絡が取れない。既に後方支援の部隊でウクライナ入りした可能性が高く、「無事かどうか確認できない」と涙ぐむ。

 3人は家族とテレビ電話で連絡を取り合うが、不安や悩みを聞くことしかできず、「力になれない自分が苦しい」と明かす。交流サイト(SNS)を開くと祖国の様子が目に入り、心がざわつく。

 それでも、ステージではつらい気持ちをぐっと飲み込み、ダンスやパフォーマンスで観客を楽しませる。「ずっと泣くわけにもいかないし、私たちは生きて前に進まないといけないから」。オルガさんは自分に言い聞かせるように語る。

 サーカスの公演は6月4日まで。公演時間や休演日はホームページに掲載している。

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