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大きく売り上げを伸ばしている催涙スプレー=神戸市西区有瀬、ビー・エヌ・ティ                                 
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大きく売り上げを伸ばしている催涙スプレー=神戸市西区有瀬、ビー・エヌ・ティ                                 

 指示役が「ルフィ」と名乗るなど、全国で相次いだ広域強盗事件を受け、護身グッズの売り上げが急速に伸びている。中でも、刺激物を噴射する催涙スプレーや、電気ショックを与えるスタンガンが人気で、高齢者からの問い合わせが目立つ。力がなくても使える手軽さが注目されているとみられるが、相手に敵対することにもなり、専門家は「危険性が増す可能性がある」と注意を呼びかける。(門田晋一)

 「催涙スプレーの売り上げは、去年の30倍のペース。今年は既に数千本が売れた。殺虫剤のように簡単に使えるので、お年寄りの購入者が多い」。護身・防犯グッズを扱う販売サイト運営会社ビー・エヌ・ティー(神戸市西区)の上田利明社長(50)が話す。

 取りそろえるスプレーは、約20種類。唐辛子の成分を含む液体を噴射する仕組みで、顔にかかれば、激しい痛みを感じ、涙やせきが止まらなくなる。

 注文が急増したのは今年1月以降という。男らが宅配業者を装うなどして自宅に押し入り、暴行して金品を奪うという広域強盗事件がクローズアップされ、盾や刺股など他の護身グッズを上回る売れ行きだ。人気の理由について上田社長は「即効性があり、武器を持った相手と距離が置けるからではないか」とみる。

 護身グッズの通販を手がけるケイエスプロダクツ(福岡県福津市)でも、催涙スプレーとスタンガンの売り上げが従来の5倍に増えている。担当者は「狛江の事件が報道され、不安を感じた人が多かったようだ」と話す。東京都狛江市では今年1月、住人の女性(90)が自宅で殺害されて高級腕時計などを奪われ、警視庁は一連のグループが関わったとみて捜査している。

 ただ、兵庫県警生活安全企画課はあくまでも「侵入を防ぐための対策」を重視。防犯カメラやアラームの設置、割れにくいガラスへの交換などを呼びかけているといい、「多額の現金を家で保管しないようにすることが有効だ」とも強調した。

 防犯グッズを製造販売する「旭電機化成」(大阪市)によると、各地の量販店から警報センサーの注文も殺到している。ドアや窓が開くとアラームが鳴る仕様で、欠品の状態が続いているという。

【新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)の話】日本は「夜に一人で歩けるほど安全」と言われてきて、今回のような凶暴で残虐な強盗事件はほとんど起こらなかった。そんな中で、一連の報道を見たお年寄りたちは「次はうちに強盗が来るかもしれない」と強い恐怖を感じたのだろう。

 そこで普通は家のドアを2重ロックにしたり、防犯カメラを設置したりする。だが護身グッズの購入者は既に対策を施していて、さらなる対策が必要だと思った人も多いのではないか。相手と比べて体力も劣る中で、安価で簡単に使えて、置き場所にも困らないコンパクトな護身グッズが選ばれた可能性がある。

 ただ使い方を間違えれば、強盗がさらに凶暴化する恐れもある。これがあるから大丈夫ということではなく、地域の防犯活動を強化することが重要だ。

【広域強盗事件】複数人で住宅を襲撃し、金品を奪う強盗事件が全国で続発。警察庁によると昨年以降、関連が疑われる窃盗などを含め14都府県で少なくとも計20件発生し、各地の警察が一部の事件で実行役とみられる30人以上を逮捕した。グループは特殊詐欺から強盗に犯行形態を変えていったとみられ、実行役の多くはインターネット上の「闇バイト」に応募して集まったとされる。指示役は「ルフィ」などと名乗り、フィリピンから強制送還され、特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で逮捕された男4人に含まれるとみられる。

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