子どもができない体にされた悔しさを、何度も何度ものみ込んできた。旧優生保護法下での強制不妊を巡り、兵庫の原告5人全員への賠償を国に命じた23日の大阪高裁判決。「この日をずっと待っていた」と、明石市の原告小林宝二さん(91)は胸をなでおろした。だが、一緒に闘ってきた妻の喜美子さんはこの世を去った。2018年の提訴から5年。5人で始めた裁判は3人となり「国は一刻も早く解決してほしい」と訴えた。
午後3時過ぎ、法廷で裁判長が「原判決を変更する」と告げ、手話通訳を見つめた小林さんは、身を乗り出して大きくうなずいた。喜美子さんの写真を胸に裁判所を出ると、拳を突き上げて笑顔を見せた。
18年に提訴してから、2人の原告が亡くなった。損害賠償請求権が消滅する「時間の壁」を理由に退けられた一審判決での落胆を経て、待ち望んだ日だった。
聴覚障害者として全国で初の訴えとなった小林さんと妻の喜美子さんは1960年に結婚し、すぐに妊娠が分かった。「男の子かな、女の子かな」と生まれるのを心待ちにしたが、母親同士が相談し、病院で子どもはおろされた。「赤ちゃん、腐ってる」と内診台で麻酔をかけられた。手術の説明はなかった。喜美子さんの下腹部には横一文字に大きく傷が残り、毎日泣いた。
不妊手術も同時に受けさせられ、子どもはできなくなった。家族連れを見るたび、小林さんは「とにかく悔しさを我慢した」。18年7月に国の責任だったと分かり、支援者に被害を明かした。「人生の夢を奪われた。私の体を元に戻して」と国に謝罪を求めた喜美子さん。待ち望んだ朗報を聞けぬまま、22年6月に89歳で亡くなった。
原告で脳性まひのある鈴木由美さん(67)=神戸市=は、12歳のころに子宮を切除された。手術による恐怖心でけいれんするなどの後遺症があり、約20年間寝たきりになった。「泣き寝入りしたら、これから先に障害がある人も同じことをされるかもしれない」と実名を公表して提訴した。
もう一組、聴覚障害のある原告の夫婦は、夫が20年11月に81歳で亡くなり、妻は高齢で訴訟の理解が難しくなった。長年「仕方ない」と身を切るしぐさの手話を繰り返し、体験を隠してきた2人だったが、県内でいち早く立ち上がった。
高裁判決は、旧法に基づく優生施策を国が積極的に進め、障害や疾病に対する社会的な差別や偏見を助長したと指摘した。鈴木さんは会見で涙ぐみ、「私たちがどんなに差別を受けてきたかを考え、こんなばかげた法律を二度とつくらないよう謝罪してほしい」と語った。(小谷千穂)
■救済法制定へ首相は政治判断を
【立命館大大学院の松原洋子教授(生命倫理学)の話】判決は、国が憲法違反を認めずに裁判を続ける限り、旧法による加害行為が続くとした。踏み込んだ判断で、国の姿勢を問う判決だ。国連障害者権利委員会の審査と勧告を受けた際も、国は一時金支給法で問題解決を図ったとした。国は自らの責任を認め、被害者に向き合うべきだ。首相が「上告をしない」と政治判断し、新たな救済法に向けて動かなければいけない。
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