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鉄道グッズで埋め尽くされた「ナイアガラ」の店内=東京都目黒区祐天寺
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鉄道グッズで埋め尽くされた「ナイアガラ」の店内=東京都目黒区祐天寺
木製ボックス席までSLの模型が運んできたカツカレー=東京都目黒区祐天寺
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木製ボックス席までSLの模型が運んできたカツカレー=東京都目黒区祐天寺
カレー店「ナイアガラ」の外観=東京都目黒区祐天寺
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カレー店「ナイアガラ」の外観=東京都目黒区祐天寺
店内に飾られた古い運賃表=東京都目黒区祐天寺
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店内に飾られた古い運賃表=東京都目黒区祐天寺
神戸新聞NEXT
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 カレーが好きだ。香り高いスパイスカレー、とろみのある欧風カレー、北海道発祥のスープカレー…。昨春、東京に赴任してからも暇を見つけては、“国民食”を食べ歩いている。そんな折り、友人から「SL列車が料理を運ぶカレー屋さんがあるよ」との情報を得た。鉄道オタクでもある友人いわく「関西エリアのグッズもあるはず」という。カレーと鉄道。類を見ない組み合わせに、胸を高鳴らせながら向かった。

■店の前で響く踏切音

 訪れたのは2月上旬。東急電鉄東横線の祐天寺駅(東京都目黒区)から商店街の奥へ。カン、カン、カン、カン-。5分ほど進むと、踏切音が聞こえてきた。誘われるように角を曲がると、目的地が見えた。

 「ナイアガラ」。踏切警報器やSL前頭部などで派手に飾られた外観は、インパクト抜群だ。寝台列車の扉でできた玄関を開ける。こぢんまりとした店内は鉄道グッズであふれていた。

 新幹線前部のカバーをはじめ、SLプレート、昔の運賃表、食堂車の照明、駅の看板、駅長の帽子、つり革…。約100点がすき間なく埋め尽くされている。

 まず、食券機で「乗車券」と呼ばれる食券を購入。カレーの辛さも“鉄道仕様”で、鈍行(甘口)▽急行(中辛)▽特急(辛口)▽超特急(激辛)から選べる。1番人気という「カツカレー」の「急行」を注文した。

■人気メニューのお味は?

 カウンター席が3席、木製ボックス席が3卓。客席を囲むように、模型用の線路が設置されていた。「3番線」で到着を待つ。

 「3番線に参りまーす」。女性スタッフのかけ声とともに、ミニチュアのSL列車が近づいてきた。慌ててカメラを構える。シュポシュポシュポ…。カツカレーが到着。「子どもだけでなく、大人の方も歓声をあげます」とスタッフ。

 揚げたてのカツは衣サクサク、肉は柔らか。まろやかでスパイスの効いたルー、白米との相性は抜群。それぞれのおいしさが「三位一体」となり、一口目で頰がゆるむ。ボリュームたっぷりだが、スプーンが止まることはなく、20分ほどでぺろりとたいらげた。

 帰り際、常連客らしき60代の女性が教えてくれた。「ナポリタンもおいしいのよ」。再訪を誓った。

■背景にあった疎開経験

 ナイアガラは1963(昭和38)年にオープン。創業した故・内藤博敏さんは2017年に81歳で亡くなるまで店に立ち、「駅長」と親しまれた。

 出店のきっかけは内藤さんの少年時代の疎開経験。小学生のころ、東京の母親と離れ、姉とともに富山県へ。毎日のように駅で列車を眺めながら「東京に戻って、大好きな母がつくるカレーライスを食べたい」と寂しさを募らせた。話し相手は「やさしい駅員さん」だったという。

 その後、レストラン勤務を経て独立。店を切り盛りしながら各地の車両工場などを訪れては、使われなくなった部品を買い集めた。

 店内には、調理場入り口に使っている阪神電鉄の「881形貫通扉」、阪急電鉄の「踏切注意看板」など関西にまつわるグッズも。長男で「助役」を務める章喜さんによると、非公開コレクションは約1500点にのぼる。探せばまだまだありそうだ。

 会社勤めの傍ら、店を続ける章喜さん。「先代はSLが大好きで、お店をほったらかしては全国を飛び回り、写真撮影やSLグッズを収集していました」と笑顔で振り返る。

 生前、「鉄道は身近なものですが、そのレールは私たちを日常の忙しさから解放し、美しい自然、懐かしい故郷を結んでいる」と語っていた“内藤駅長”。店内に飾られた笑顔の写真に癒やされつつ、小旅行を味わった気分で店を後にした。(末永陽子)

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