兵庫県のマスコットキャラクター「はばタン」が今年１月１７日、生誕２０周年を迎えた。黄色く丸い顔につぶらな瞳、優しく笑う口－。のほほんとしたルックスで「ひよこ？」と思われがちだが、実はその誕生日からも分かるように、阪神・淡路大震災からの復興をイメージしたフェニックス（不死鳥）なのだ。４３体が集結した街頭パレードや熱中症の受難、かつて存在した仲間の「ぷくタン」「ぱなタン」など、２０年間の歩みを振り返った。（金　慶順）

　はばタンは２００３年１月１７日生まれの男の子。０６年開催の国民体育大会「のじぎく兵庫国体」、全国障害者スポーツ大会「のじぎく兵庫大会」に先立って、大会のＰＲマスコットとして県がデザインを公募した。３０６９点の応募の中から、神戸市在住のデザイナーＪＵＮＢＯｗ（ジュンボウ）＝本名・金成俊＝さんの案が採用された。

■名前は公募

　名前も公募だ。当時の赤穂市立小学５年の女児が「元気に羽ばたく」という意味で「はばタン」と名付け、２万４１４３件の応募の中から選ばれた。

　その名の通り、国体本番を前に、はばタンの人気は羽ばたくように上昇した。ぬいぐるみやＴシャツなど当時製作された関連グッズは１００種類以上。県内各地からイベントの出演依頼も相次ぎ、約８０体の着ぐるみが作られた。

■何体存在？

　国体開幕１００日前、０６年夏にあったＰＲイベントでは、４３体のはばタン（の着ぐるみ）が集結し、神戸市の三宮センター街などをパレードした。そのうち１１体（の中の人）が熱中症で救護テントに運ばれるというトラブルもあったが、大勢のはばタンが笑顔を振りまく光景は、さらにファンを増やした。

　ところで「同時に複数体は登場しない」「世界に１体だけ」という設定のマスコットキャラも少なくない中、はばタンは、着ぐるみ界の暗黙のルールにとらわれないのだろうか？

　はばタンが所属する県広報広聴課に、着ぐるみは現在何体あるのかを問い合わせてみた。

　すると「マスコットキャラクターという性質上、『何体存在』という数の公表は公式には控えさせていただきます」との回答だった。現在は、同じ会場で複数のはばタンが登場することはないように運用しているそうだ。

■トリオでＰＲ

　実は、はばタンにはかつて仲間がいた。細身の「ぱなタン」と、ふくよかな「ぷくタン」。のじぎく国体をトリオでＰＲした。国体翌年の０７年、はばタンは正式に県のマスコットキャラクターに任命されたが、ぱなタンとぷくタンは国体のみで活躍し、その後は露出が減った。

　はばタン以外にも、国体をきっかけに誕生した自治体キャラは多い。徳島県の「すだちくん」は１９９３年の東四国国体、千葉県の「チーバくん」は２０１０年の千葉国体で誕生した後、県のキャラとしてＰＲ活動に励む。

■ファンレター、毎年１００～２００枚

　全国的な知名度はどうだろうか。１１年の「第１回ゆるキャラグランプリ」では、約３５０体のエントリーの中から６７位となった。その後、全国的なゆるキャラブームは徐々に落ち着きを見せるが、はばタンへのファンレターは今でも毎年１００～２００枚ほど送られてくるという。とり年の１７年には年賀状が１１８２枚届いたそうだ。

　県広報広聴課は１月末、フェイスブックやインスタグラムの公式アカウントではばタン生誕２０周年を祝う動画を投稿。ユーザーからは「おめでとう」「これからも兵庫県を盛り上げて」などのコメントや、のじぎく国体を懐かしむメッセージが寄せられた。

　２０歳になった今も、はばタンは県内各地のイベントに顔を出す。防災、環境、教育、選挙啓発など幅広い場面でＰＲ活動にいそしんでいる。