昨年10月、神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄が明らかになると、30年前の最高裁通達がにわかに注目された。特別保存(永久保存)を義務づける記録を、「世相を反映した事件」や「全国的に社会の耳目を集めた事件」などと明白に列挙していたためだ。だが、その通達が出されたのと同じ1992年、最高裁は内規の一部も改正。明治期以来の民事裁判の判決原本が一斉に廃棄されそうになったが、学者らの尽力によって間一髪で救われた事実はあまり知られていない。
この時、判決原本の救出運動で実務の中心を担ったのが、東京大教授(当時)の青山善充さん(83)だった。青山さんによると、92年1月、最高裁はひっそりと「附則第3項を削る」として内規を改めた。この変更は、確定後50年を経過した判決原本の原則廃棄を意味していた。閲覧の求めがほぼないのに、裁判所の書庫が民事判決原本などで満杯だったのが理由だ。
廃棄の対象は、明治初期から1943(昭和18)年までの約70年間に言い渡され確定した民事判決のほぼ全て。3万6千冊余りの簿冊を積み上げた高さは約2・2キロメートルにもなる膨大な量だった。この時期の民事裁判は、近代化の足跡や庶民生活の実態が色濃く反映されていた。近代日本の「歴史の証し」が瀬戸際にあることが突如明るみに出て、研究者らは慌てた。
ただ、廃棄方針は最高裁にとっても苦渋の決断だったようだ。後に最高裁の担当者が残した報告によれば、東京地裁や大阪地裁などでは当時、保存期間50年を経過した判決原本が書庫の棚を百数十メートル分も占拠していた。青山さんは、保存を求めて交渉をした裁判官の言葉を覚えている。
「私たちだって、先輩が毛筆で書いた判決原本を捨てたいとは思わない。でも現場に行ってごらんなさい。書庫に入りきらない文書が平積みされている」
廃棄は2年後の94年に始まる予定だった。文書の救出を目的に、国立大学教授ら有志が「判決原本の会」を結成。粘り強い交渉の末、移管に最高裁が同意し、3~4年間の緊急措置として、全国10カ所の国立大学が、空いている研究室などに一時避難させた。大変な作業だった。東京大の受け入れ分だけで段ボール1787箱に上った。
永続的な保管場所が見つからなければ廃棄せざるをえない「背水の陣」だったが、学者らが汗をかく保存運動は共感を呼んだ。曲折を経て、国立公文書館に司法に関する公文書も保存する新法が99年に成立。大学に避難させていた判決原本は、2001年から10年余りかけて公文書館に移された。
移管先が確保され、重要な司法文書は保存されていくと思われた。しかし昨年、各地の家裁で、重大な少年事件の記録廃棄が判明する。通達などで明白に定められた特別保存(永久保存)の制度は、十分機能していなかった。
青山さんは言う。「廃棄の淵にあった民事判決原本が保存され、一息ついてしまった。当時、少年事件記録は頭になかった。永久保存の運用をその後も見守っていれば良かった」
(霍見真一郎)
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