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体調不良に苦しむ女性。「日用品に何が入っているか普段から意識してほしい」と話す=神戸市内
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体調不良に苦しむ女性。「日用品に何が入っているか普段から意識してほしい」と話す=神戸市内
「化学物質過敏症」への配慮を呼びかける神戸市のポスター
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「化学物質過敏症」への配慮を呼びかける神戸市のポスター

 柔軟仕上げ剤や洗剤、香水などに含まれる化学物質に過敏に反応し、せきや頭痛、吐き気などに苦しんでいる人たちがいる。最近少しずつ名前が知られるようになった「化学物質過敏症」だ。化学物質はさまざまな物に付着したり、空中を漂ったりしているため、発症すると日常生活に支障を来すという。症状に悩む女性と出会い、現状を取材した。(綱嶋葉名)

 「日常生活で行けない場所、できないことが多い。本当にしんどいです」

 神戸市内の会社員、田中里美さん(47)=仮名=がつぶやく。

 以前から、建材などに含まれる化学物質が原因とみられるせきに悩まされていたという田中さん。現在暮らすマンションは、建材などを調べた上で購入した。壁紙の塗料にも気を配り、万全を期してきた。

 しかし、しばらくしてせきが再発。原因を探ろうと、せきが出るタイミングを記録すると、周囲の部屋のベランダから、柔軟剤や洗剤の香りが漂ってくる場面ばかりだった。

 せきに加え、目がチカチカするようになり、さらにはたばこなどにも反応するようになった。インターネットで検索した結果、柔軟剤などに含まれる化学物質に接することで体調不良を引き起こす「化学物質過敏症」に当てはまると気が付いた。医師からは「柔軟剤と関連はあるかもしれない」と言われた。

 管理人に頼み、マンション内に「香りの強いものを控えてください」といった旨の掲示を張ったが、効果はなかった。田中さんは「マンションは購入しており、引っ越しは難しい」と声を落とす。

 悩みは住居だけではない。化学物質は空気中に漂ったりあらゆる物に付着したりするので、さまざまな人が商品に触れるスーパーなどでは買い物が難しい。服も食品も通販で購入。電車のいすに座れなくなり、図書館の本も借りられなくなった。医療機関には不織布を持参し、診療用のいすに敷いてもらう。「恥ずかしいけど、そうしないと治療が受けられない」

「全品水洗い」全国から洗濯物 加西のクリーニング店脚光

 悩んでいるのは彼女に限らない。国民生活センターによると、「柔軟仕上げ剤のにおいに関する相談」は2018年度は87件だったが、22年度(3月21日現在)には181件に増加。せきや息苦しさ、頭痛やめまい、吐き気などを訴える声が寄せられている。

 「息ができず倒れてしまう人もいるが、周りに理解されにくいことも多い」とは、NPO法人「化学物質過敏症支援センター」(横浜市)。神戸市などは「発症メカニズムが明確になっていない今、誰しも発症する可能性を持っており、他人事ではない」とし、化学物質過敏症への理解を求めるポスターを作成し、協力を呼びかけている。

 そんな中、加西市のクリーニング店「クリーニングハウス ムー」は、合成洗剤や化学のりなどを使わない「全品水洗い」で、化学物質過敏症の悩みを抱える人から信頼を集めている。今では北海道から沖縄まで全国各地から宅配で洗濯物が届く。

 同店は、化学物質過敏症の人も安心して利用できるように試行錯誤を重ね、客一人一人の特性に合わせて手洗いする現在のスタイルに行き着いた。多いのは、「買った服を着られる状態になるように洗濯してほしい」という依頼だ。

 店主の高見明美さんも3年ほど前に化学物質過敏症になったといい、「苦しさはとてもよく分かる。(水洗いは)労力やコストの負担は大きいが、これからも困っている人たちの助けになりたい」と力を込める。

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