兵庫県丹波篠山市福住の介護老人福祉施設「やまゆりの里」で主任生活相談員を務める稲葉夏輝さん（３５）が、全国の福祉現場の若手職員を対象にした「社会福祉ヒーローズ」賞のグランプリに輝いた。交流サイト（ＳＮＳ）で利用者や職員の日常を発信し、介護の魅力を広く伝える活動が、高く評価された。

　同賞は全国社会福祉法人経営者協議会（東京）が、福祉の魅力発信を目的に２０１８年３月に創設。介護、保育、障害者支援などに従事し、福祉現場の改革意欲と実績を持つ２０～３０代の若手職員を対象に表彰してきた。５回目の今回は、全国各地から過去最多の６８人がエントリー。書類や面談など３回の選考を経て、稲葉さんを含む６人がファイナリストに残った。

　稲葉さんは、インスタグラムや動画投稿アプリ「ＴｉｋＴｏｋ（ティックトック）」で、利用者が施設で農作業に取り組んだり、料理を周囲に振る舞ったりしている様子を生き生きと紹介。さらに、職員対抗の相撲大会で利用者を前に白熱した取組を繰り広げたり、職員同士の結婚式で利用者に祝ってもらったりした場面も発信してきた。

　東京都内で２月末に開かれた全国大会「社会福祉ヒーローズ　トーキョー　２０２２」で、稲葉さんは「ＳＮＳでの発信を意識することで利用者を深く知り、ケアの質向上につながる」などと発表した。人材不足に悩む業界にもかかわらず、投稿がきっかけで全国から就職希望があり、約４年間で１５人の採用に結び付いたことや離職者が減ったことにも言及。「笑顔をつくり続ける発信をして、たくさんの人に（福祉に）興味を持ち、身近に感じてもらいたい」と締めくくった。

　稲葉さんは、学生ら参加者を含めた審査でグランプリに選ばれ「業界の中では（ＳＮＳのフォロワーなどは）多い方だが、日本全体でみたら本当にまだまだ。もっと魅力や取り組みを発信していく必要がある一方、数字にこだわり過ぎずに、うまく活用していきたい」と語った。（谷口夏乃）