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高木北小学校内の「放課後キッズルーム」。待機児童対策として午後5時まで開放される=西宮市薬師町
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高木北小学校内の「放課後キッズルーム」。待機児童対策として午後5時まで開放される=西宮市薬師町
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神戸市内の全ての学童保育で導入されているICTシステム。来退所の予定を事前に保護者が入力し、児童がカードをタッチすると保護者に連絡が行く。湊小学校では、児童が通う三つ目の学童保育施設が4月、校内に新設され、同校の新1年生は児童の6割が学童を利用しているという=神戸市中央区東川崎町1、湊小学校
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神戸市内の全ての学童保育で導入されているICTシステム。来退所の予定を事前に保護者が入力し、児童がカードをタッチすると保護者に連絡が行く。湊小学校では、児童が通う三つ目の学童保育施設が4月、校内に新設され、同校の新1年生は児童の6割が学童を利用しているという=神戸市中央区東川崎町1、湊小学校
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プログラミングや英語も学べる民間学童「Y・E・S」。利用者が増え、尼崎市内3カ所に展開する=尼崎市塚口町1
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プログラミングや英語も学べる民間学童「Y・E・S」。利用者が増え、尼崎市内3カ所に展開する=尼崎市塚口町1

 共働きやひとり親家庭の小学生を受け入れる「放課後児童クラブ(学童保育)」の需要が空前の高まりを見せる中、定員超過への対応に苦慮する自治体が相次いでいる。兵庫県内の登録児童数は2022年度に約5万7千人と過去最多を更新。希望したのに利用できない「待機児童」は千人を超えており、どうやって受け皿を確保するか悩みは尽きない。(小谷千穂)

 ■学童の代わりに

 13日午後、西宮市立高木北小学校で、ランドセルを背負った児童ら約30人が、ある教室に集まった。放課後から午後5時まで使える「放課後キッズルーム」。宿題や塗り絵、読書と思い思いに時を過ごし、4人のスタッフがそばで見守る。

 元々は学童と関係なく、子どもが自由に遊べる場にしようと市が15年度から各校に設け、利用時間は午後4時半までにしていた。ところが市内で待機児童が年々増える中、とりわけ深刻な6校については19年度から順次、事業者に委託し、学童の代わりとして使えるように時間を30分延ばすことにした。

 利用は多く「毎日30人ほどが来て、数人は最後までいる」とスタッフが話す。

 県によると22年5月の調査で、学童の利用登録をする児童は5万6943人と、5年前から約1万人増えた。共働き世帯の増加に加え、核家族化や、近所付き合いの減少が背景にあるとみられる。地域の見守りが少なく、子どもだけで留守番をすることに不安を感じる保護者も多いという。

 ■民間学童を支援

 同調査で待機児童は1023人。コロナ禍で利用の減った前年から約100人増え、20年度に次ぐ過去2番目の多さとなった。

 県の担当者は「希望者が増加するスピードに、施設の増築が追いついていない」と説明する。特に都市部では学校の空き教室がなく、運動場や近隣の土地もスペースに余裕がない。

 県内市町別では、最多が尼崎市の425人で、全国でもトップになっている。次いで宝塚市が275人、西宮市が116人。ほか三木市が56人▽加西市35人▽姫路市34人▽小野市31人▽川西市28人-など、12市町で利用を待つ児童がいた。

 解消に向け、尼崎市では15年から民間の学童に補助金を出し、18年の18カ所から22年には36カ所に倍増させた。学習や体操に特化するなど民間ならではの取り組みが人気を集めている。

 一方、神戸市では待機児童が出ていない。市によると、あえて学童に定員を設けず「希望者数に合わせて毎年増設や新設を続けている」という。全施設で職員の事務負担を軽くするため、児童の出欠や保護者への連絡は情報通信技術(ICT)で管理するシステムも取り入れている。

 ■人材確保も難題

 待機児童の対応に悩む市町にとっては、専門資格を持つ「放課後児童支援員」の確保も課題だ。国の基準では、おおむね40人以下の児童に対し常時最低1人の配置が義務付けられる。実際には非常時に備えて2人以上を擁する必要があるものの、県内で有資格者は6千人に届いていない。

 西宮市のある公立学童(留守家庭児童育成センター)では80平方メートルのスペースに児童が70人近く来る日があり、支援員の一人は「狭い場所に詰め込まれて騒がしくなり、けがの危険性もある。正直神経をすり減らす」とこぼす。

 発達障害など児童らの特性に配慮し、コロナの感染対策も欠かせない。それでも給与は民間平均に比べて低く「子どもの命を預かる仕事として見合っていない」と打ち明ける。

 人員不足は学童の開放時間にも影響する。実際に延長保育は多くの市町で午後7時までとしているが、尼崎市や宍粟市、淡路島3市は6時までにとどめており、保護者からは「迎えに行くのが間に合わない」との声も相次ぐ。

 学童の待機児童に詳しい新潟県立大学の植木信一教授は「幼稚園の空き教室や公民館など余裕のあるスペースを確保したり、支援員の給与を上げる補助金を出したりといった自治体独自の取り組みを進め、待機児童の解消を目指すべきだ」と提言。「待機児童ゼロだから良いのではなく、十分なスタッフと適切な環境で子どもの育ちに寄り添ってほしい」と呼びかける。

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