神戸市直営のバス営業所の運転手222人のうち、乗務中に事故を起こした経験がない人は10人にとどまることが市への取材で分かった。同市中央区のJR三ノ宮駅前で市バスが横断歩道に突っ込み、歩行者2人を死亡させた事故から21日で4年。市も「『市バスは安全』とは、とても思ってもらえない数字」と運転手の事故歴の多さは認め、抜き打ちで運転操作をチェックするなど指導を強化する。
神戸市バスは市内に9カ所の営業所があり、うち3カ所を直営、6カ所を民間バス事業者に委託している。市交通局によると4月現在、直営する石屋川、中央、垂水の3営業所で勤務する運転手計222人のうち95%が過去に事故を起こしていることになる。過失のない事故を経験した6人も含まれるという。
こうした現状に、3月の市会委員会で市議からも「事故を繰り返している運転手に運転させ、市民が巻き込まれても責任を取れるのか」などと指摘があった。
背景には、職員の高齢化もあるとみられる。市バス運転手の約8割は50歳以上。年齢が高いほど運転年数も走行距離も長くなり、事故歴も増える傾向にある。
一方、市バスの過失を伴う事故(有責事故)の件数は2018年度が95件、19年度は52件と、三ノ宮駅前の2人死亡事故があった19年を境に大きく減った。しかし19年10月と12月には運転手がサイドブレーキをかけ忘れ、ガードパイプに接触したり、民家にぶつかって小学生にけがをさせたりと、2人死亡事故を想起させる重大事案が続発した。
市交通局は運転手の指導監督を強化するため22年から、スマートフォンのアプリを使って添乗調査をデータ化。管理職が抜き打ちでバスに乗って運転手の声かけやハンドル操作、加速といった技術を細かくチェックし、データを組織内で共有しているという。
22年に営業所内でパワハラなどの不祥事も発覚。組織風土改革や運転手の資質向上を目的に、直営の3営業所を統括する役職を初めて設けた。その「営業所統括担当」を務める安藤義治さん(57)は「『4・21』を教訓に、少し間違えば命を奪う事故を起こす可能性があるという意識を改めて浸透させていく」とする。
22年2月には、19年の2人死亡事故の新聞記事や過去の事故事例などを掲示した研修施設を市交通局内に整備。これまでに延べ1200人以上が研修を受けたという。(名倉あかり)
【神戸市バスによるJR三ノ宮駅前での2人死亡事故】2019年4月21日午後2時過ぎ、神戸市中央区布引町4のフラワーロードで発生。青信号で横断歩道を渡っていた男性=当時(23)=と女性=同(20)=が市バスにはねられて亡くなった。市によると、ほかに6人が負傷した。男性運転手=懲戒免職=は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で起訴され禁錮3年6月の実刑判決を受けた。
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